過去肯定型とは、過去の経験や出来事に対して、郷愁的で温かな態度を示すことをいう。昔を懐かしみ、過去を郷愁する時間展望であるといってよい。反対に、過去否定型とは、過去の経験や出来事に対して、否定的で嫌悪的な態度を示すことをいう。実際に、過去にひどく嫌なことがあったかどうかは別にして、主観的に、過去を嫌悪する場合がこれにあたる。

 現在快楽型とは、時間や人生に対して刹那的で享楽的な態度を示すことをいう。今が楽しければいいという享楽的な態度は、現在に固執する短視眼的な生き方を肯定する。それに対し、現在運命型とは、現状や今の人生に対して、運命的で無力的な態度を示すことをいう。希望のなさや無力感に支配された時間の見方である。

 そして未来型とは、将来に対して計画的で禁欲的な態度を示すことをいう。明日の人生を思い描いて、現在の刻苦を我慢する。辛抱をよしとするわが国では、もともと多く信奉されてきた時間のあり方だ。一方、超越未来型とは、肉体が滅んだ後にも続く永遠の未来を志向する。輪廻や来世の思想が深く身についていれば、個人の生を超越した時間の展望を持つようになる。その反面、生が疎かにされてしまうこともある。

未来型社会だった日本

 ジンバルド教授の研究によれば、近代化が進んだ現代社会で、人が幸福で健康に暮らしていくためには、未来型と現在快楽型をあわせもっているのがよいという。

 キャリア上の成功を夢見て、仕事に追われるあまり、家庭や友人を犠牲にしてしまうことが、未来志向の人には往々にしてある。しかし、一瞬一瞬、自分の目の前に現れる幸せな出来事を味わうことを忘れていると、功成り名遂げた後にふと気がつけば、空虚な時間ばかりが残っていたということになりかねない。

 将来の幸福のためには未来型が大切なのだが、同時に、現在快楽型となって「今この時」の幸福感を享受できないと、本当の幸せはないのだ。