ところで、わが国の社会は、先進国の中でもとくに、未来型が多いことで特徴づけられてきた。それが近年、現在快楽型が増えている。
未来型の時間展望を持つということは、今日の喜びを先送りして、明日のために備えることである。時間は貯蓄できないが、未来志向というのは、あたかも時間を貯金しているようなものだ。だから、貯蓄性向が高いわが国には合っていた。
これまで「勤勉さ」と呼ばれてきた日本人の特徴は、時間展望の観点からすると、未来志向という言葉に変わる。日本の復興を支えてきた原動力は、明日は今日よりよくなるという希望に満ちて、現在の苦労を厭わないメンタリティにあった。
映画「ALWAYS三丁目の夕日」(西岸良平原作・山崎貴監督)が大ヒットした裏には、当時を懐かしむ過去肯定型の中高年だけでなく、映画に映し出された希望に溢れる時間志向に対して、当時を知らぬ世代からも、多くの共感が寄せられたからだろう。
それが今では、小学生から高齢者まで、あらゆる世代が多忙になり、時間的なプレッシャーを感じるようになっている。すると、明日を考える余裕がなくなり、現在志向の短視眼に陥ってしまう。
だから若者世代では、10年後のキャリアや30年後の人生を考えるよりも、明日の試験の成績に興味関心がロックオンされてしまう。それを打破するためには、大人から率先して、未来を向く必要がある。
人事の時間展望
時間展望というのは、あくまで個人の特徴である。しかし、ここまで読んできた読者の方々は、もうお気づきだろう。そう。時間展望は組織にも当てはまるかもしれない。