「ALWAYS三丁目の夕日」の舞台となった昭和33年から39年(1958~64年)、職場には未来志向が支配していた。バブル全盛期の1990年には、企業は財テクに走り、無謀な投資を行って、目先の利益を追う現在快楽型の行動が目についた。
それが、2012年の現在では、外貨の稼ぎ頭であった電機産業や、内需を牽引してきた大規模小売業などで、過去肯定型の時間展望を持たざるを得なくなっている。企業全体として過去を邂逅し、過去の成功体験に囚われて、身動きが取れなくなっているのだ。
一方、中国・韓国からの激烈な競争にさらされている製造業では、自社ではどうにもならない環境の下で、無力感や悲観に押しつぶされて、現在運命型の態度が支配しているのかもしれない。
人事制度についていえば、逆説的だが、昇進や昇給や評価などの処遇は、すべて過去の仕事経験に基づいて決められている。だれがこの組織で認められるのか、だれが上に行くのかについては、すでに起こった過去のことばかりを見比べてきた。時代が変わっても、人事制度は後ろ向きだし、いつも昔に縛られている。
作家のダン・ガードナーによれば、「専門家の予想は見事に外れる」という。過去の事例から合理的に考えて将来を予測するのが、専門家の仕事だ。だが、過去から割り出した将来の予測は、外れる運命にある。
だから、これから未来に賭けようとする企業であれば、未来から人事を発想するのがよい。過去に示した組織への貢献に対する論功行賞としての人事ではなく、将来への期待に基づいて処遇を考えるのがよい。若手のポテンシャルを信じて、早くから責任ある仕事を任せ、そこで高いパフォーマンスを示したら、迷わず抜擢する。そういう大胆な逆張り施策が必要だ。