就職が厳しいのは、いまに始まったことではない。e-Stat学校基本調査の結果では、大学卒業者数に占める就職者数の割合は、1992年から2011年までの平均で64.2%であり、あいかわらず厳しいままである。バブルが崩壊し、「就職氷河期」という寒々しい言葉が生まれた1990年代前半から、20年ほどずっと変わらず、就職に悲観したかわいそうな学生たちが世に溢れている。

 だが意外にも、厚生労働省の就職内定状況調査では、就職希望者(進学・留学・ニート・フリーターなどは含めない)に占める就職者数の割合は、1997年から2011年までの平均で、大卒93.4%、高卒94.1%の高い就職率を示している。卒業者数と就職希望者数のどちらを分母にするかで、統計に大きな違いが生じるためで、これが大きな難点だが、「就職氷河期」の中でも、じっと寒さに耐え抜き、就職を希望し続けた人は、ほぼ就職できているというのが、わが国の現状である。そこが、サッカー大国のスペインやイタリアの若者とは違っている。

 経済学では、雇用のミスマッチ(失業)には、雇う側と雇われる側がお互いに情報が少ないために、出会いの機会が見つけられず、一時的なミスマッチが起こるケース(摩擦的失業)と、雇用を生み出してきた産業自体が衰退してしまって、雇う側の意欲が低くなったり、新たな産業で必要とされる知識・スキル・能力を、雇われる側がもっていないために、長期のミスマッチが起こるケース(構造的失業)が考えられてきた。

 この2つのうちで、ハローワークが解決できるのは、もっぱら短期のミスマッチのケースだろう。確かに、ハローワークが大学に設置されれば、一時的なミスマッチ(摩擦的失業)を解消するための役に立つかもしれない。

 しかし現状では、大学生の就職・採用活動はウェブを使って行われており、雇う側と雇われる側で情報がいびつであること(情報の非対称性)や情報が少ないことから、ミスマッチが起こると考えることにはムリがある。

 逆に、雇う側も雇われる側も情報がありすぎる(情報過多)ために、マッチングできずにいる。情報の大波に飲み込まれて、状況判断ができず、身動きが取れなくなっているのだ。

 産業構造の変化から起こる長期的ミスマッチ(構造的失業)のほうはもっと深刻である。たとえば、これまでわが国の経済を担ってきた電器産業は、中国や韓国の企業に圧され、軒並み業績不振に陥っている。「日本のものづくりを守り抜く!」というトヨタ自動車・豊田章男社長の決意は勇ましいが、頼りにすべき内需は、エコカー減税に頼らなければおぼつかない。