キャリアは計画できるのか
スタンフォード大学のジョン・クランボルツ(『その幸運は偶然ではないんです!』2005年 ダイヤモンド社)によれば、キャリアは用意周到に計画できるものではなく、予期できない偶発的出来事によって大きく影響されるという。
学校を卒業して社会に出るという、一見同じような道筋をたどっていても、長いキャリアを歩んでいけば、キャリア上の転機は人によって異なる。それぞれ個別の背景と事情をともなっており、どれひとつとして、同じ現象はあり得ないほどユニークである。だから、キャリアは、変幻自在に姿を変える生きものなのだ。
チャンスはだれにも巡ってくる。ただそれを、チャンスと認識する人にだけ、チャンスをつかむことができる。運命の女神は後ろ髪をもたないから、一度逃がしたチャンスを悔いても、元には戻らない。だから、偶然、巡ってくるチャンス(serendipity)を見逃さないよう、準備をするのが肝心だ。これが、クランボルツ教授のいう「計画的偶発性」理論のポイントである。
それはサッカーの監督も同じだ。サッカーの監督ができることといえば、試合に勝つために、前日までに納得できる準備をすることだけである。試合が始まってしまえば、あとは選手の技量と運に任せるしかない。試合数がそれほど多くない代表監督であれば、一見楽に見えるかもしれないが、かといって、有名選手をそろえて、あとは運に任せるというのは、評論家か素人のやることだ。準備の期間が少ない上に、結果だけが求められるから、なおしんどい。
幸福を経済学する
キャリア教育をまじめに受けて、希望する会社に就職できればHappyなのか?
他人もうらやむ会社に就職して、数ヵ月で退職してしまう若者が多くいる。その一方で、苦労の末になんとか引っかかった会社で、生きがいを感じる人もいる。キャリアの成功というものは、簡単には定められないからややこしい。世間でいわれる「よい会社」に入り、管理職に昇進していくことが、成功の定義とはならないからだ。