「募集重視から選考重視へ」。募集力の高い有名企業では、行き過ぎたエントリー数を正常化するためには都合がよいだろうし、募集力の低い中小企業でも、考え方を変えるだけで、母集団形成の問題に悩まされることはない。では、選考重視の戦略をとるにはどうすればよいのか?
仕事ができる人を見極める選考
人物本位採用の名の下で、面接依存が定着している。「多様な人材を評価する方法は面接しかない」という少し偏った信念によって、それが助長されてきた。大学のAO入試でも面接に力が入るのだから、それは会社に限ったことではない。
面接偏重で選り抜いた人材は、面接での受け答えから判断して、さわやかさがあり表面上は優秀な人材だ。しかし、20社以上から内定を得る「面接エリート」が、仕事をやらせてみると、高い能力を発揮する人物ではないことがある。会社の和を乱さない「素直でいい人」を採りたいのならそれでもかまわないかもしれないが、グローバルに企業活動を展開していかなければならない時代には、「いい人」だけでは通用しない。
また、「面接で上から順に選んだから、よい人材が採れているはず」と自信をもっていても、面接の成績は、仕事にはかかわらない部分を増幅して、むりやり差をつけているようなものなので、あてはまりがあまりよくない。15分の面接では、面接官は第一印象で判断して、罪悪感をもたずに応募者の適否を判断できるのだが、1時間以上に及ぶ丁寧な面接をしてみれば、第一印象がさえない人でも、本人の持ち味や良さが出てきて、だれが優秀なのかがわからなくなってしまう。学生の側でも、15万円もの学費を払って面接塾に通い、必死で対応している。
選考重視の方向で人事のパラダイムを変化させようと思えば、「面接を行わない選考」を考えていくのがよい。企業において採用の目的とは、面接エリートのような「コミュニケーション能力」の高い人材を選ぶことでは決してない。その本来の目的は、「仕事をやらせてみたら成果を出す」人材を採るために、なんらかの選考方法を使って採用前に予測することである。仕事の成果を予測するためには、どんな選考方法がベストなのかを考える。この本来の目的に照らしてみれば、面接は決して妥当な方法とはいえないのだ。