-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
サプライチェーン内のスピード感の違いが機会損失を生む
現代において、業界が直面している最大の制約は、テクノロジーでも、人材でも、資本でもない。それは時間だ。
小売業や半導体、通信など、業界を問わず、バリューチェーンは動きの速い層と遅い層に分化しつつある。各層は、それぞれ根本的に異なる時間軸で動いていて、両者の差はますます広がっている。
たとえば、ある商品の評判がSNSで爆発的な話題となり(有名な例がスタンレーのタンブラー)、需要がわずか数時間で急増する一方、サプライチェーンがそれに対応するまでに四半期単位の時間を要するとしよう。このスピードの不一致のせいで、数十億ドル規模の市場で先行者利益を競合他社に奪われるという事態が繰り返されることになる。
通信需要が予測できないほどに突如急増したとする(パンデミックの際、ズーム利用者はわずか3カ月で30倍に増えた)。その場合、数年前の計画に基づいて構築されたインフラは限界に達し、通信事業者は通信容量を拡大するとともに、当初の計画にはなかった数十億ドル規模のネットワーク投資を迅速に実施せざるをえなくなる。
もし従来型の自動車メーカーとそのサプライチェーンのパートナーが、デジタル技術の進化についていけなければ、市場が求める内燃機関車から電気自動車への転換は頓挫し、数百億ドル規模の投資と長年の取り組みが無駄になるだろう。
こうしたスピードの不一致は、業界全体の動きを鈍らせている。従来の連携モデルは、意思決定を順番に進め、サプライヤーの状況を限られた範囲でしか把握できないことを前提としており、現在の環境を想定して設計されたものではない。自社のサプライチェーンのすべての階層を把握できている企業はわずか16%であり、サプライチェーンの50%未満しか把握できていない企業がおよそ3分の1を占めている。直接取引しているパートナーより先の状況まで十分に把握できていないことが、従来型モデルの特徴であり、モデルが機能しなくなる主な理由でもある。
動くスピードに差が生じると、このような逐次的で緊密さを欠く関係は、むしろ価値を損なう要因となる。ビジネス成果を挙げるために、業界横断的な連携がますます必要とされる今日、この状況は深刻な問題になりつつある。しかし、一部の業界は別の道筋を示し始めている。リスクの共有、資本投入へのコミットメント、さまざまな時間軸における情報の透明性を軸として連携体制を再設計することによって、より迅速に動けるようになり、バリューチェーン全体を加速させている。
データセンター部門が示す「同期」の可能性
データセンター部門には、この変化が如実に表れている。AIインフラの構築を競い合う中で、開発事業者、機器プロバイダー、公益事業者(電力会社)は、連携のあり方の再考を迫られた。これら3つの業界は、まったく異なる時間軸で動いている。施設の建設には18~24カ月、新たな電力網の供給能力を稼働させるには複数年を要する一方、新たなAIによる電力需要には週単位での対応が必要となる。
いくつかの主要市場における規制当局や地域社会、許認可当局との交渉は、もともと同期させることが非常に難しい実施スケジュールに、さらなる不確実性をもたらしている。
だが、先頭を走るプレーヤーは、スピードの違いに制約されるのではなく、連携の仕組みを一から再設計している。
・データセンター事業者は、より早い段階から電力会社と緊密に連携し、再生可能エネルギープロジェクトを共同開発するほか、オンサイト発電への投資や、電力系統の柔軟性と非常時のバックアップ電源を確保するためのマイクログリッド(小規模な電力システム)やエネルギー貯蔵ソリューションの活用を検討している。
・機器プロバイダーは、需要の拡大に対応するため、製品やモデルを見直している。リードタイムを短縮するため、プレハブ型モジュール式のエネルギー技術ソリューションを開発するとともに、主要なデータセンター集積地の近くに製造拠点を共同で設置している。また、次世代GPUを見越して製品をあらかじめ設計することによって、顧客が毎回ゼロから設計し直すことなく、最新のAIハードウェアに接続できるようにしている。







