グローバルチームの成否を左右する7つの要素
Illustration by Elen Winata
サマリー:国境を越えた協働を阻む主因は、文化の違いよりも組織の仕組みにある。筆者らが行った研究では、協働の成否を左右する7つの要素が判明した。リーダーは、制御しにくい摩擦要因に対処するのではなく、みずから変えられる仕組みを整え、信頼と連携を強めることに注力すべきだ。本稿では、信頼と連携を増幅させる4つの要素を中心に、現場で摩擦を吸収する「橋渡し役」への報い方や意思決定権の最適化など、グローバルな協働を成功させるための実践的アプローチを紹介する。

グローバルのコミュニケーションを難しくするのは各国の文化ではない

 最近、フォーチュン100に名を連ねる米国企業で戦略を担当している上級幹部から尋ねられたことがある。それは、世界のビジネスリーダーたちもしばしば発する問いだ。

 その人物の会社はグローバルにビジネスを展開しており、アジア市場のチームは良好な成績を上げていた。しかし、アジア発の戦略が全社の戦略として採用されているケースが極めて少ないことに気づいた。アジアのチームが数々の目覚ましいイノベーションを生み出していたことを考えると、有益な機会を十分に活かせていないと思えた。

 この状況にショックを受けて、この人物は筆者に尋ねた──「やはり、アジアの人たちは自己主張することに躊躇しがちなのでしょうか」。

 率直な問いだ。それに、アジアのこともよく学んでいるのだろう。この問いの根底にあるのは、アジアの文化では直接的なコミュニケーションが好まれない場合が多いという発想だ。

 筆者らは、その会社の本社と、同社で最も規模の大きいアジアのチームを比較してみた。データをもとに判断すると、状況は文化の問題ではないことが明らかになった。本社とアジアのチームのコラボレーションがうまくいかない原因は、文化のレベルよりも、システムのレベルで生まれていたのだ。

 もちろん、文化がまったく影響していないわけではない。地位が高い人に対して意見を述べることは、多くの場合、アジアの人たちにとって居心地のよいことではない。しかし、文化が原因のすべてではないし、文化に関連する要因に対処すれば問題を解決できるわけでもない。実際には、問題はいくつかのシステムレベルの要因により生まれているケースが多い。

 筆者とブリッジワークス・グローバルの同僚たちは数年を費やして世界のさまざまな地域で調査を行い、そうしたシステムレベルの要因を見出した。調査では、アンケートに基づく「グローバルコラボレーション指数」の算出、リーダーたちに対する合計何百時間ものインタビュー調査、グローバル企業10社(いずれも「フォーチュン500」もしくは「フォーチュン10」の構成企業、あるいはグローバルにビジネスを展開する中国の巨大テック企業)での「摩擦マッピング」のワークショップなどを実施した。

 このテーマに関する筆者らの研究は、米国と中国を主な対象にしている。この両国は、物理的・文化的・言語的な隔たりが極めて大きい2カ国だ。しかし、研究では、メキシコ、東南アジア、東アジア、西欧についても調べた。

 研究に着手した時点では、グローバルなコラボレーションが破綻する最大の要因は文化なのだろうと予想していた。しかし、予想ははずれた。筆者らの研究により、グローバルなチームがどれくらいうまく機能するかを左右する7つの要素が明らかになった。その7つの要素は、下の図表にあるように、リーダーが及ぼせるコントロールの度合いが異なる。

 大半のリーダーはグローバルなコラボレーションをめぐる課題を解決しようとする際、「摩擦を増大させる要素」にエネルギーをそそぎすぎるという誤りを犯す。しかし、それらの要素は、リーダーがほとんど、もしくはまったくコントロールできない。もっとエネルギーをそそぐべきなのは、「信頼と連携を増幅させる要素」だ。これらの要素は、リーダーがコントロールできるものだ。これらの要素を変えることにより、摩擦がビジネス上の問題になることを防げる。

摩擦を増大させる要素

 時差、言語、国の文化という3つの要素は、リーダーがマネジメントすることはできるが、真の意味で変えることはできない。