リーダーが「よい人」になろうとする組織文化の落とし穴
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サマリー:多くの組織で「感じのよさ」を優先するあまり、業績や成長が停滞する「よい人文化」の弊害が顕在化している。背景には、対立や厳しいフィードバックを避ける心理と、波風を立てない無難な業務プロセスが定着している現状が存在する。本稿では、表層的な良好さに潜む構造的リスクを解き明かし、真の成果を生む組織文化へ脱皮するための具体的な対応策を提示する。

自社の文化は「感じのよさ」重視に偏っていないか

 最近の『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の記事「『よい人』であることがリーダーシップを損なう」で筆者らは、リーダーは単なる「よい人」をやめ、組織のために「真にためになる行動」を実践すべきだと指摘した。人々を安心させることに注力するのではなく、組織のパフォーマンスを強化するために必要な、厳しい対話や決断に積極的に取り組むということだ。筆者らの経験から、他人を傷つけたり失望させたりすることを恐れる気持ちを克服し、結果を最優先にしようと決めたリーダーは、組織全体の持続的な成功を、より確かなものにすることができる。

 しかし、多くの組織において、「感じのよさ」を求めることは個々のリーダーシップの問題に留まらず、文化の至るところに浸透している。実際、筆者らが大企業や非営利団体に助言してきた60年の経験から、「感じのよさ」を重視する文化を持つ組織は業績を損なうリスクを抱えているのに対し、より厳しい文化を持つ組織ほど、財務目標を達成し、組織の目的を果たす可能性が高いことを見てきた。

 たとえば、筆者らが支援したある企業では、年末のパフォーマンス評価でほぼすべての従業員が、期待を「満たしている」か「上回っている」と評価されていた。これを受けてマネジャーは、パフォーマンスに関する厳しい話し合いを避け、部下に感じよく接することができたが、個人が最低限の水準を超える成果を求められることがなく、一貫して平凡な成果に留まった。その結果、かつては業界をリードしていたこの企業は、従業員が社内で高い評価を受け続ける一方で、より革新的な製品で市場シェアを奪う機敏で積極的な競合企業についていくのに苦戦するようになった。

 筆者らが支援した別の企業では、営業担当者があまりに多くの製品を売るように求められており、その多くはコモディティ化が進んで利益率が低下しているという認識が広く共有されていた。それにもかかわらず、営業部門の幹部も会社の経営陣も、長年の顧客に購買行動を変えてもらうための厳しい話し合いをしようとしなかった。売上実績も利益率も期待を下回っていた。

 やはり筆者らが支援したいくつかの非営利団体では、理事会の規模が大きくなりすぎて十分に機能せず、CEOに対してほとんどアカウンタビリティ(結果に対する責任)を問えなくなっていた。そのため人間関係は良好でも、組織のパフォーマンスは低迷していた。

 しかしながら、「感じのよさ」を重視する文化から、より高い水準のパフォーマンスを求める文化へと転換することは容易ではない。「感じのよさ」に対する自分の考え方を変えるだけでも難しいのだ。まして、厳しく、徹底して高い要求をすることにあなたと同じような心理的・感情的な抵抗を感じている他人の考え方を変えようとしても、さらに難しい。また、厳しい姿勢が本当に組織の運営やパフォーマンスにプラスの変化をもたらすのかと、疑う人もいるだろう。

 組織文化は、会議からパフォーマンスマネジメントまで、さまざまな業務プロセスに組み込まれている。会議では互いの意見に異議を唱えているか、それとも単に進捗報告をしているだけか。パフォーマンスマネジメントでは成果をどれだけ体系的に検証し、改善を強く求めているか。こうしたプロセスに潜む「感じのよさ」への微妙な偏りは、目に見えないか、見つけにくいことが多い。

 自社の文化が「感じのよさ」に偏りすぎていると思うなら、筆者らがさまざまな組織で効果を確認してきた3つの戦略に取り組もう。すなわち、シニアリーダーを巻き込むこと、このアプローチの有効性を現場で実証すること、そして、より厳しい業務レビュー会議を行うことである。それぞれを詳しく見ていく。

シニアリーダーを巻き込む

 組織文化は、トップが正式な方針を打ち出すことよりも、リーダーが模範を示し奨励する行動を通じて広がっていく。マネジャーはシニアリーダーを見て何が本当の意味で成功と認められるのかを理解し、従業員はマネジャーを手本にする。そうした行動が組織全体に波及していく。したがって、シニアリーダーシップチームが「感じのよさ」から「よいこと」を重視する文化へと転換すれば、その変化はチーム内だけに留まらない。リーダーが自分のチームでも同じ行動を取り、それを促すことで、文化は組織の下へと波及していく。

 筆者らは、こうした変化が実際に成功することを目にしてきた。たとえば、クックスは同僚とともに、11の非営利団体のエグゼクティブチームを対象に、より厳格なフィードバックとアカウンタビリティに重点を置いたリーダーシップ開発プログラムを実施した。そして、そのうち8団体で、フィードバックとアカウンタビリティに対する従業員の認識に測定可能な改善が見られ、平均で9ポイント上昇した。さらにその後の調査では、シニアリーダーとミドルマネジャーがフィードバックとアカウンタビリティを以前より日常的に実践しており、これらについて従業員による評価が全体として向上した。こうした実践が、組織文化に日常的な慣行として定着したのだ。

 一方、ベイン・アンド・カンパニーが1250の組織を対象に行った調査によると、最も高い成果を挙げているリーダーシップチームがこれらの行動を実践できている一方で、調査対象となったリーダーシップチーム全体の中でこれを一貫して実践できているチームは、わずか5分の1にすぎないことがわかった。

 この点でシニアリーダーシップチームの行動を変える効果的な方法の一つが、体系化されたピアフィードバックである。各シニアリーダーが同僚から、チームの有効性を高めている、あるいは妨げている行動について、率直かつ内密のフィードバックを受け取れる仕組みを構築するのだ。そして、各リーダーが同僚とともにそのフィードバックを振り返り、質問をし、個人としてもチームとしても具体的に何を変えるかを決めるための場を設ける。