リーダーの行動とシステムこそが企業文化を変える
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サマリー:多くのリーダーは、企業文化をコミュニケーション施策として捉えている。しかし、文化はメッセージではなくシステムと行動によってつくられる。リーダーが構造を変え、みずから行動で示すことが不可欠である。本稿で... もっと見るは、文化がなぜ誤って理解されやすいのか、そしてそれを実践的に機能させるための要点を提示する。 閉じる

企業文化の変革はなぜ失敗するのか

 企業文化は、リーダーシップにおける優先事項として頻繁に語られるものの一つだが、最も一貫して理解されていないものの一つでもある。経営幹部は口癖のように、文化は戦略上の必須要素だと言う。バリュー浸透キャンペーンを展開し、ウェルビーイングプログラムを発表し、ミッションステートメントを改訂し、信頼やパーパスについて熱を込めて語る。

 ところが、これほど多くの取り組みにもかかわらず、何かが機能していない。多くの組織では、リーダーが文化について声高に語るほど、その姿勢が形式的に感じられる。特に、行動がメッセージと一致しない場合は、なおさらである。

 文化は、意思決定の慣行から従業員エンゲージメント、ブランド認知、リスク許容度に至るまで、あらゆるものを左右する。文化を誤って管理すれば、組織は信頼だけでなく、推進力も失う。

 この逆説が筆者らの研究の出発点となった。文化のリアルタイムの作用を理解するため、「Elgar Encyclopedia of Leadership」(エルガー・リーダーシップ百科事典)の一環として国際比較研究を実施した。狙いは、上級リーダーが文化をどのように定義し、表現し、組織運営に落とし込むのか、そしてそうした努力が組織の人々にどのように受け取られるのかを探ることだった。

 1年半にわたり、北米、欧州、アジアにおける民間、公共、非営利セクターの上級リーダー164人を対象とした。選定は、文化的イニシアティブへの積極的関与や、大規模な文化変革の監督経験に基づいて行った。詳細なインタビュー、チームでの対話、職場観察に加え、リーダーシップへの信頼、心理的安全性、コミュニケーションの透明性といった指標を追跡する半期ごとの調査データや従業員エンゲージメントデータを活用し、文化がビジョンステートメントの中ではなく、会議、日常の場面、そして日々の意思決定の中でいかに形成されるかを検証した。

 その結果、一貫したパターンが浮かび上がった。多くのリーダーが文化をコミュニケーション戦略として扱っていたのである。パーパスをどのように言語化し、バリューをどのように打ち出し、社内キャンペーンをどのような方向性で行うかなど、文化はメッセージングに宿ると彼らは考えていた。しかし、新たなナラティブを導入しても、文化は変わらない。文化が変わるのは、システムが変化する時である。リーダーがみずからリスクを負うときであり、規範が単に宣言されるだけでなく、実際に行動で示されるときである。

 調査の焦点は、次の4点であった。

・上級リーダーは文化の影響をどのように定義し、測定しているのか