-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
強みを活かし合う人材同士を組み合わせる方法
ギャップがブランドの魅力を取り戻そうとした際、白羽の矢を立てたのは、一見すると意外な人物だった。仕立てのよいミニマルなシルエットで知られる高級ブランドを手掛ける、ビクトリア・ベッカムである。一方、ファストファッション大手のザラは、プエルトリコ出身のアーティスト、バッド・バニーとのコレクションを発表した。バッド・バニーはスーパーボウルのハーフタイムショーで、そのコレクションのアイテムをいくつも身につけて登場した。
どちらも異色の組み合わせのように思える。しかし、そこには明確な狙いがあった。互いの不足を補い合う組み合わせだったのだ。ギャップとザラは、デザイン面での評価と話題性を手に入れ、ベッカムとバッド・バニーは、はるかに大きな市場にみずからをアピールする機会を得た。
こうした互いの強みを活かし合う関係は、実はほとんどの組織の中にも見られる。たとえば、広告会社がベテランのクリエイティブディレクターとZ世代の新進の人材を組ませたり、テクノロジー企業がデザイナーにストレッチアサインメントを任せたりする場合だ。いずれも人材の可能性に賭ける行為だが、多くの企業はそれを直感に頼って行っている。この人物には才能があるか。このアイデアは新鮮か。いまが適切なタイミングか。
こうした直感も重要だが、それだけでは運に左右される部分が大きすぎる。創造的な才能を持つ人材、特にキャリアの段階が異なる人材同士を組み合わせるには、より体系的な方法がある。本稿では、その方法を紹介する。
筆者らは、4200人を超えるミュージシャンと数百のレーベルについて、15年間にわたるデータを分析し、この方法を導き出した。音楽業界は、表に出ない情報が極めて少なく、リリースした作品も、誰と組んだかも、批評家による評価も、ほぼすべて記録に残るため、このテーマを研究するうえで格好の対象である。
キャリアを支える3つの資本
どのようなアーティストが成功し、その理由は何だったのかを追跡すると、3つの要素が浮かび上がってきた。社会学者ピエール・ブルデューが、「経済資本」「社会関係資本」「文化資本」と呼んだものである。
経済資本:商業面の実績
音楽ならストリーミング再生数や売上げ、映画なら興行収入、ビジネスなら売上高や製品の普及実績などがこれに当たる(筆者らの研究では、アーティストが得る印税の代理指標として、ラジオでの放送回数を用いた)。音楽業界に限らず、すでに稼ぐ力を証明している人には、無名の人ならけっして得られないような2度目のチャンスが与えられる。この資本が、他の活動を支える資金的な基盤となる。
社会関係資本:人脈
誰と協働できるか、どのような顧客や意思決定者にアクセスできるか、そしてそうしたつながりを通じて何を得られるかを指す。豊かな人脈を持つ人は、変化の兆しをいち早くつかみ、隣接分野の仕事から評価や知見を吸収し、自分のアイデアをより広く届けることができる。企業で言えば、部門をまたいで仕事をしてきた経験や、課題解決に必要な人材を巻き込めるだけの信用や影響力がこれに当たる。
文化資本:正当な評価
受賞歴や批評、あるいはその分野の経験豊富な同業者から質の高い仕事をすると認められていることなどによって蓄積される。文化資本は、他の資本とは別の軸で形成される。批評家から絶賛された作品が必ずしもヒットするわけではなく、ヒット作が必ずしも批評家やその分野で尊敬を集める人々から高く評価されるわけでもない。
この3つの資本はいずれも、協働を通じてある人から別の人へと移転しうる。ただし、その移転が均等に行われることはめったにない。マネジャーに求められるのは、それぞれの資本を豊富に持っているのは誰か、逆に不足しているのは誰かを見極め、必要な資本が両者の間で移転するようにすることだ。
人材の組み合わせを設計する
筆者らの研究から、こうした考え方に基づいて創造的な人材をマネジメントするための基本的な方法が明らかになった。
新進気鋭の人材と実績のある人材を組ませる
研究では、十分な実績のないアーティストが有名アーティストと楽曲をリリースすると、ソロの作品に比べてラジオでの放送回数が61%増えた。自分だけでは何年もかかりかねない飛躍を、一気に実現できるのである。







