本当に部下を成長させるOJTの設計に欠かせない3つの目標
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サマリー:実際の業務を通じて知識やスキルを身につけるOJTは、多くの企業で導入されている人材育成の手法だ。しかしOJTを成功させるには、単に仕事を任せるだけではなく、大きな成長目標を日々の具体的行動へと細かく分解することが欠かせない。上司には答えを教えることよりも、成果・スキル・発達の3つの目標を立て、事前・最中・事後の各局面で必要な支援を置く「発達環境の設計者」としての役割が求められる。本稿では、日常の業務を部下の器と能力を育てる発達機会へと変えるための実践的なOJTの組み立て方を解説する。

連載『成人発達理論で考える部下の育て方とリーダーの成長』はこちら。

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仕事を任せれば、部下は自然に育つのか

「次のプロジェクトは君に任せる。わからないことがあれば、いつでも相談してほしい」。上司からそう告げられた部下は、期待を感じる一方で、戸惑いも覚えるかもしれません。どこまで自分で決めてよいのか。何を学ぶことが期待されているのか。どの時点で相談すべきなのか。肝心な点が共有されていない結果、部下は小さなことまで確認を繰り返すかもしれません。

 反対に、「任された以上、自分で解決しなければならない」と考え、問題を抱え込む可能性もあります。上司から見れば、前者は主体性に欠け、後者は報告が遅いように映るでしょう。けれども、そもそも部下が主体性を発揮できるように仕事が設計されていたのでしょうか。

 OJTとは、単に仕事を任せ、経験から学ばせることではありません。経験を与えることと、経験から学べるようにすることは別です。何を身につけてほしいのか、どのような支援を置くのか、経験をどう振り返るのか。そこまで設計されて初めて、日常業務は育成の場へと変わります。

大きな目標だけでは、日々の行動は変わらない

 企業の育成計画では、「半年後には一人でプロジェクトを運営できるようになる」「次世代リーダーとして成長する」といった目標がよく掲げられます。これは方向性を示すという点では意味がありますが、部下にとっては、今日や今週、何を変えればよいのかが見えにくいままです。

 大目標と日々の行動の間には、想像以上に大きな距離があります。その距離を埋めるには、時間の単位を小さくしていかなければなりません。

 たとえば、「3カ月後に小規模プロジェクトを自律的に運営する」という目標を立てたとします。今月は、会議の目的と論点を設計する。今週は、参加者から異なる意見を引き出す。今回の会議では、自分が結論を述べる前に、全員の見解を確認する。このように、3カ月、1カ月、1週間に1回の行動をつなげていけば、成長目標が日常の実践へと翻訳されます。

「主体性を高める」「リーダーシップを身につける」といった抽象的な目標だけでは、部下は何を試せばよいのかわかりません。成長を促すには、本人が次の行動を具体的にイメージできるところまで、目標の解像度を高める必要があります。

OJTには3つの目標が必要である

 OJTを設計する際には、成果目標、スキル目標、発達目標という3つを区別すると、育成の焦点が明確になります。

 成果目標とは、仕事として何を達成するのかを示すものです。納期、売上げ、品質、顧客満足、会議で決めるべき事項などが該当します。スキル目標は、その仕事を通じてどのような能力を身につけるのかを表します。具体的には、分析、説明、交渉、会議運営、関係者調整などです。

 これらに加えて、成人発達理論の観点からは、発達目標を設定することが重要になります。発達目標とは、仕事や他者を意味づける枠組みについて、何を問い直すのかを示すものです。たとえば、反対意見を自分への否定と捉えないこと、上司の正解を探すのではなく自分の判断を持つこと、不確実な状況で結論を急がず、複数の視点を保つことなどが挙げられます。

 部下に会議の進行を任せる場面を考えてみましょう。時間内に結論を出すことは成果目標です。参加者の意見を整理し、論点を明確にすることはスキル目標になります。そして、反対意見を自分への批判として受け取らず、議論を深めるための情報として扱うことが発達目標です。