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私たちの幸福はイノベーションにかかっている
創造を純粋な楽しみのために行うのは人間だけである。庭づくりをする、ピアノで新曲に挑む、詩を書く、デジタル写真に細工をする、部屋の模様替えをする、チリコンカルネの新しい調理法を試すなど、何にせよ、創造に取り組んでいるとこのうえなく楽しい。
たしかにイノベーションは、問題を解決したり、利益を上げたり、出世したりするために行う場合もある。しかし、私たちの大多数にとっては、イノベーションは手段ではなく目的である。イノベーションを実践する際に、「実用面で役立つから」といった理由づけは必要ない。創造に携わるのは、そのために生まれてきたからであって、選択の余地などない。ミハイ・チクセントミハイやタル・ベン・シャバーといった専門家も同じ見解である。「人間は創造性を発揮している時がいちばん幸福だ」と述べているのだ。
歴史を振り返ると、大勢の人々が創造性を発揮する機会を奪われていた。創造のための道具が高価すぎて手に入らなかったり、創造の自由が制約された社会で暮らしていたりしたからである。それに引き換え私たちの世代は恵まれている。100ドルの映像編集ソフトウェアなど格安のツールが手に入り、創造性溢れる世界中の仲間とつながることができ、ウェブの恩恵で誰とでも発明成果を共有できる。ルネサンス、啓蒙主義、産業革命が何だというのだ。いまこそがイノベーションの黄金時代であり、私たちはこの事実を喜ぶべきである。
私たちの未来はイノベーションにかかっている
私たち人類は今日、斬新な解決策を必要とする気の遠くなるほど多くの課題に直面している。気候変動、世界的な流行病、破綻国家、麻薬関連の犯罪、テロ、核拡散、環境悪化などの課題に対処するには、イノベーションのための新しい仕組みを考案する必要がある(これはグーグル・アイデアズ設立の背景でもある)。さまざまな管轄地域にまたがる多面的な課題を解決する方法を学ぶ必要がある。
20世紀初め、トーマス・エジソンとゼネラル・エレクトリック(GE) は近代的な研究開発(R&D)組織を考案した。それに伴って開発されたいくつもの手順は次々と模倣され、100年分に相当する技術発展に寄与した。いま人類が直面する最も差し迫った課題は、技術にまつわるものばかりではない。社会、文化、政治などに関係し、規模もグローバル化している。だからこそ私たちは、エジソンと同じように、イノベーションの方法をめぐるイノベーションを起こさなくてはいけない。
幸いにも、アイデア市場、クラウドソーシング、フォークソノミーなど、先進的なメタ・イノベーションがあり、専門分野、国境、組織、イデオロギーの枠を超えたイノベーションに役立てることができる。これが、人類の存亡を左右する最近の課題を解決するただひとつの道だろう。過去と同じく未来もまた、イノベーションにかかっている。
だから諦めてはいけない。イノベーションは一時の流行ではない。これこそが本命、唯一の頼みの綱である。いまのところは、これを信じない人もいる。しかしいずれ、企業で経費節減に邁進する右脳の小さい人々を含めて、全員が信じるようになるはずだ。
創刊50周年記念フォーラム「経営の未来」のお知らせ
生き残るために取り組むべき5つの課題
『経営は何をすべきか』
[著者]ゲイリー・ハメル
[翻訳]有賀 裕子
[内容紹介]ウォール・ストリート・ジャーナル誌が選ぶ世界ナンバー1経営思想家であり、『コア・コンピタンス経営』『経営の未来』で有名なゲイリー・ハメル氏。同氏がグローバル社会において求められるマネジメントとは何か。混沌とした状況で、いま、そして今後、何を指針としていくべきか。経営の大家が送る渾身の提言。







