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経営者の仕事は決断すること
編集部(以下色文字):柳井さんはこれまで、革新性が高く、結果の予測が困難な事業に挑む際も的確な判断を下し、圧倒的な成果を挙げてきました。経営学者の故・野中郁次郎教授が『直観の経営[注1]』の中で柳井さんの名前を挙げていたように、物事の本質を瞬時に見抜く能力に長けた人物と評される機会は多いと思いますが、経営者はどうすれば直観力を発揮して、難しい判断が迫られる局面を乗り越えることができるのか。実践者として、柳井さんの考えを聞かせてください。
柳井(以下略):経営者として直観的な判断を下せる人は、組織に関わることを隅々まで知っている人だと思います。
会社の内側で起こっていることだけではありません。業界のこと、さらには世界のことまで目を向けられているか。世界が分断された時、自分たちがどのような影響を受けるかを理解し、何をすべきかを瞬時に、的確に判断するための準備ができていなければ、致命傷を負いかねません。
組織のことがわからず、問題を理解できていない状態で、何を決められるのでしょうか。コンサルタントに頼る人もいますが、そもそも経営者と同じ水準で、異なる視点から物事を捉えられる人はほんの一握りです。また、たとえ優秀なコンサルタントに出会えたとしても、自分よりもコンサルタントのほうが経営や組織に詳しいのであれば、そのような経営者に存在意義はありません。ましてや、直観など働きようがないでしょう。
経営者が最終判断のみを行うケースも多いと思いますが、組織と主体的に関わり、問題を見つけ出す必要があるということですね。
経営者ならば組織が直面している問題にいち早く気づき、解決に着手すべきです。誰よりも先に問題を把握し、その問題を解決するために、誰が、いつまでに、どのような基準で判断を下すべきかを考えておく必要があります。経営者が最初の問題を解き始めない限り、組織は動き出せません。部下が問題を見つけて、解いてくれることまで期待する人もいるようですが、おかしな話です。
ただし、問題の解き方は、実際に商品をつくり、商品を売る現場のほうがよく知っています。だからこそ、経営者は現場の声に耳を傾けるべきです。そして、現場を通して顧客の声を聞く必要があります。直接足を運ぶ機会は限られるとしても、インターネットのおかげで、我々のもとには年間3000万件以上の声が集まるようになりました。そのまま採用するのではなく、問題の本質をつかみ、経営方針へとつなげていくことが経営者の役割です。格好をつけているのか、経営者が現場の声を聞かないようでは話になりません。
経営者が決断の責任を部下に負わせ、決められない部下を責めることすらあるのは問題だと、柳井さんは以前から指摘していました[注2]。



