ビッグデータ分析はビジネスにとどまらず、さまざまな分野で導入されている。スポーツの分野でそれを活用し、大きな成果を上げているのが、アメリカ・フロリダ州オーランドに本拠地を置くNBAのプロバスケットボールチーム「オーランド・マジック」だ。2012年4月に開催された「SAS Global Forum Executive Conference」のパネルディスカッションに招かれた同チームCEOの発言から、ビッグデータ分析のアプローチについて探る。
Game Changerとなる
ビッグデータ分析
「データ分析のプロフェッショナルの67%が、データ分析が試合の行方を変えると言っています」と、SAS Global Forum Executive ConferenceにおいてTechWebのCMO、スコット・ヴォーンは語った。「ただし、自分が勤めている企業も同じ考え方をしていると言う人は42%しかいません」。
今回の会場となったオーランドに本拠地のあるNBAのプロバスケットボールチーム、オーランド・マジックにとって、データ分析から得られる価値は明らかだ。まさにGame Changer(試合の行方を変えるもの)なのである。
顧客行動やビジネスの動きがデータとして蓄積されるようになると、これまでにないペースで情報化が進み、会議室ではバスケットコート上と同じスピード感を持って決断を下されなければならなくなる。一瞬のうちに、大切な機会を一つ逃してしまうかもしれない。データのスピードだけでなく、量と質も同じくらい重要だ。
パネルディスカッションの席で、SASのCMOジム・デイビスはオーランド・マジックのCEOアレックス・マーティンズとスポーツにおけるアナリティクスの重要性について語り合った。ゲームの質を改善するために、あるいは顧客との関係を改善するためにデータ分析を利用することについて、マーティンズは、価値ある機会を逃さずに正しい判断を下すための好機であり、プレッシャーでもあると受け止めているようだ。
二人の会話を振り返ってみよう。ここに、ハイライトを抜粋する。
5時間かけていたレポートが
5クリックで可能に
ジム・デイビス(以下、デイビス) データ分析は真のGame Changerになるのでしょうか。
アレックス・マーティンズ(以下、マーティンズ) われわれはデータ分析のアプローチを何年も前に導入しました。データ分析は、顧客に対するよりよい理解や、チケットの価格設定などのビジネス・プランニングに役立ちます。データ分析を利用すれば、試合ごと、年度ごとのデータを読み解き、それぞれの試合、それぞれの座席を基準にして、オンデマンドな形で理想的なビジネスプランを立てられるようになるのです。たとえば、データ分析を使ってチケットの売上げを予想できますし、試合の進め方を変えることもできます。まさに、映画になった『マネーボール』の世界です。
監督とデータ分析チームは、コートで動き回る選手を含め、試合の全局面を俯瞰します。データを分析して、相手チームの攻撃に対してどうすれば理想的なディフェンスを行えるか予測するためです。すでに、「ある試合における最も能率的な出場メンバーのラインナップは?」「どのチームが他のラインナップに対して多く得点できるだろうか?」「どのチームが他よりもディフェンス面に優れているか?」とシステムに問いかけられるようになりました。
かつては、試合レポートを手作業で作成していました。明日の試合に備えて、夜中に5時間もかけて作っていたのです。今はマウスを5回クリックするだけ。わずか数分でスタッフが活用できる何十ものレポートを作成することができます。分析は、われわれのやり方をよりスマートにしてくれました。
デイビス マーティンズさんにとってビッグデータとは何ですか。
マーティンズ ビッグデータによって、顧客をより深く理解できます。顧客それぞれの好みを総合して、試合やイベントをカスタマイズすることができるのです。また、ビッグデータは、年度、試合、あるいは時間単位で、特定の座席に対する需要を判断する、といったビジネス予測にも役立ちます。以前はスタジアムのロウアー(1階席)対アッパー(2階席)といった形で指定席の価格を設定していました。現在は、セクションとして席をとらえるのではなく、ビッグデータに基づいて個別の席に対する需要をつかめます。ビッグデータは、試合や対戦相手によって何を価格の計算に入れるべきか線引きすることを支援してくれます。
さらに、ビッグデータはわれわれのビジネスを進化させる予測にも活用できます。なぜなら、ビッグデータはわれわれにビジネスモデルをよりよくする提案をしてくれるからです。SASは顧客のニーズ、チケットの用途、シーズンのイベントと相互に影響する商品購入など、それ以外にも多くの面で、ビジネスの進化を支えてくれています。