筆者であるノーマン R.オーガスティンのキャリアは数奇ともいえる。設計技師としてキャリアの第一歩を踏み出したそばから、不幸にも不測の事態に遭遇し、以後ペンタゴンや政府のスタッフ、陸軍次官、ロッキード・マーチンCEO、アメリカ赤十字理事長など、新しいキャリアを重ねるたびに、「最悪のタイミング」「最悪の場所」で、さまざまな危機に見舞われてきた。
普通ならば、とうに潰れてしまっているだろうが、彼はそのたびごとにクライシス・マネジメントの能力を磨き、これを武器に、キャリア・アップを果たしてきた。そんな類稀なる経営者がみずからの危機管理能力のエッセンスを「危機を予防する」「危機に備える」「危機の存在を認める」「危機を食い止める」「危機を回避する」「危機を利用する」という6段階に体系化し、さまざまな例証と共に紹介する。