ビッグデータが、日本のものづくりを進化させている。生産設備や販売後の製品、ネットワーク装置といった企業内外の機器(マシーン)からさまざまな測定データをリアルタイムに収集・統合して、不具合や異常、故障を予測し、実際に問題が起きた際のダウンタイムとリカバリー・コストを回避できるようになったのだ。製造現場に今、革命が起ころうとしている。
映画の興行収入予測にビッグデータの活用?
ハリウッドでも
ビジネス・アナリティクスの活用は始まっている
映画産業の中心地、米ハリウッドには、1980年代から「ストーリー・アナリスト」と呼ばれる人たちが活躍しています。出演者のギャラの高騰などから制作費が膨らんでいるのを背景に、脚本を客観的・数量的に分析し、その脚本の作品化の価値を事前に評価するのです。
ただ、近年この業界に新しい動きが起こっています。ビジネス・アナリティクスの適用です。
脚本とそのストーリー展開をさまざまな要素に分解し、そこへニューラルネットワークなどの高度な機械学習の分析手法を適用して、映画化した際の興行収入を予測するという企業の現われです。これには製作サイドも、従来のストーリー・アナリストやその他興行収入予測を行ってきた人たちも猛反発しました。「コンピュータに何がわかる!」「コンピュータに自分が書いた脚本が評価できるか!」と。しかし、算出された予想興行収入の正答率たるや、これらの人々の度肝を抜くような結果でした。
この新しい手法を取り入れたストーリー・アナリスト企業は、単なるアナリシス(解析)ではなく、ビジネス・アナリティクス(分析論)を体現しています。両者の根本的な違いは何か? それは、解析結果をビジネス上の意思決定につなげ、その評価までを含めて、一連のサイクルを回しているか否かです。散在する膨大な情報を分析するだけでなく、将来を予測して意思決定を支援し、具体的な企業行動へ結びつけられるかどうかにあります。
ではこのようにアナリティクスをビジネス上の意思決定に活用するにはどうすればよいでしょうか?
分析力重視型組織の特徴

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ビジネス・ソリューション・プロフェッショナル
高野善隆
MITスローン・マネジメント・レビュー誌の報告によれば、アナリティクスの活用と企業業績には明確な相関があります。アナリティクスの活用が進む組織の業績は、導入して間もない組織の業績を3倍ほど上回っているのです。こうした組織では、ビジネス・アナリティクスの活用サイクルが回っています。未活用データや情報精度の向上を目指してデータが収集され、解析から洞察を導き出し、意思決定がなされて結果の評価へとつながるわけです。
※ 図「ビジネス・アナリティクスの活用
サイクル」は、下記よりダウンロード
してご覧いただけます。
どんなに高度な解析をして、素晴らしい洞察を得たとしても、それがビジネスの意思決定上に何の影響も与えないのであれば、それはビジネス・アナリティクスとはいえません。大切なのは洞察に基づいて意思決定を行い、その結果の評価へと結びつけるサイクルを回す。これが重要で、そのサイクルが回っていることが分析力重視型組織の大きな特徴です。