2.感謝の念は共感される
 会計・金融専門の人材紹介会社であるアカウンテンプスの調査によれば、アンケートに回答した従業員の35%、CFOの30%が、達成した成果に対する頻繁な認知・評価は金銭以外の最も有効な報酬だとしている。従業員の尽力と献身に感謝を表明することで、彼らに「自分たちは大切にされている」と感じさせることができる。

「最近では、ほとんどの社員が金銭的報酬にそれほど期待していないため、その人だけに向けた感謝の一言が大きな影響力を持ちます」。こう述べるのは、コンサルティング会社ダイバース・アウトカムズ創設者で、アメリカン・エキスプレスの元人材担当責任者のスティーブ・リチャードソンだ。「大きなグループやチームに対して感謝の言葉を送る時でも、私は1人ひとりに対するEメールにその人への一言を付け加えます。そうすれば、それは個人にとって特別なメッセージになるのです」

 公的な認知・評価もまた、金銭的コストをかけずに大きな見返りを得られる有効な手段である。自社のイントラネットで特定の従業員やチームを称えたり、タウンホール・ミーティングで業績を紹介したりすれば、大きな影響をもたらすことができる。

 従業員が上級幹部と1対1で過ごす時間も、報酬の一種として支持されている。CTIのインタビューにこんな回答も寄せられた。「上司に時々ランチや朝食に連れて行ってもらうのは、感謝されているというだけでなく、自分への興味も持たれているということです」

 従業員に感謝する場合には、やり過ぎないように気をつけなくてはならない。感謝の一言が最大の効果を発揮するのは、口先だけではなく心からの言葉である時だ。

3.休憩を取り入れる
 5~10分、早足で散歩するだけでその後の生産性が高まることが、研究によって再三指摘されている。しかし、多くの人がいまの仕事を失うまいと苦労している現状では、勤務中に休憩するなど無理だと感じている人がほとんどだ。職場に常に顔を見せていなくてはならない、という規範を曲げるために、マネジャーが率先して手本を示すとよい(勤務時間中に休憩を取ってジムに行くなど)。部下に対して、会社の健康プログラムの活用を奨励しよう。あるマネジャーは週1回の午後のミーティングのスケジュールに、終了後の10分間の休憩を組み込んでいる。参加者全員に、デスクに戻る前に短時間でも気分転換をしてもらうためだ。

 金銭的報酬の充実は、たとえそれが可能だとしても、有能な人材のモチベーションを高めるにはもはや十分ではない。お金では動かない最高の人材を獲得したい企業は、金銭以外の有意義な報酬に投資しなくてはならない。読者の皆さんは、どんな報酬に最も魅力を感じただろうか。ぜひ知らせてほしい。


HBR.ORG原文:Attract and Keep A-Players with Nonfinancial Rewards May 24, 2012

 

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI、前身はセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー)の創設者、所長兼エコノミスト。