与えられた課題をこなして終わりという研修も多いなか、海外で自ら考えて行動することの価値は大きいですね。私は大学生を指導していますが、自発的にアクションを起こしてもらうことは難しいと常々感じています。研修に参加した人たちのモチベーションはどこから引き出されたのでしょうか。

 それにはいろいろな仕掛けや工夫が必要ですが、「そもそもの目的を明確にすること」と「それを日々振り返ってもらうこと」は鉄則だと思います。

「何が目的だったのか」の確認を習慣化することで、「昨日何を得たのか、今日どうするのか」が見えやすくなります。これを愚直なまでに己に問い続けることで、日常の何気ないシーンも心のアンテナに引っかかってくるようになり、それを仕事にひも付けて生かすことができるようになるのです。

 その意味でも、参加企業の要望に応える大きなテーマ設定を行うだけでなく、組織の一人ひとりが企業のテーマに沿う形で自身のテーマを設定し、仮説検証を繰り返した上でアンサーを見出すことがポイントになってくると思います。

研修というよりも、体験型のワークショップに近いのかもしれませんね。

 講演スタイルの研修も実施しますが、それと同時に対話やコミュニケーションを重視しています。これは当社現地法人のプログラム事例ですが、海外の日系企業では、日本人スタッフと現地スタッフのコミュニケーションギャップが積み重なった結果、組織内に対立構造が生まれてしまうこともあります。

 こうなると必要なのは、個々のスキルアップというより組織の変革です。お互いの立場から主張をぶつけあっても問題の本質的解決には至りません。

 こうしたケースでは、相互理解のための話し合いの場を設け、互いに何を期待しているのか、何がわだかまりの原因なのかを率直に話し合って、共通の目標を見つけていくスタイルの研修を行います。いわば、チームビルディングのお手伝いです。

 そう考えると、語学力以上にグローバル人材に求められるのは、異文化を理解することや、その中でリーダーシップを発揮して現地のスタッフと恊働するマインドであり、スキルなのだと私は思います。