つまるところ、各チームに優秀なマネジャーが配属されるよう体系的に取り組む必要がある。パフォーマンスがばらつく原因は、人間の性質そのものに根差しているのだ。チームを構成する各人が必要とする意欲、モチベーション、明瞭性の度合いはさまざまであり、その差異の総和がパフォーマンスの大きなばらつきにつながる。そして意欲やモチベーション、明瞭性を最大化できるのは、優れたマネジャーしかいない。
とはいえ、優れたマネジメント人材はそうそういない。求められる能力が希少だからだ。ギャラップの調査結果によれば、優れたマネジャーは以下の能力を備えている。
●チーム全員のやる気を引き出して行動を喚起し、説得力のある使命とビジョンを示すことでチームの意欲を高める。
●成果をみずから引き寄せる積極性、および逆境と抵抗を克服する能力を備えている。
●明確な結果責任の文化を醸成する。
●従業員との間に信頼、率直な対話、そして完全な透明性が生まれる関係を築く。
●駆け引きではなく、生産性に基づき意思決定を行う。
ギャラップの調査によれば、上記の能力すべてを備えている人材はおよそ10人に1人である。優れたチームを築いて業績を飛躍させるこれらの能力のうち、いくつかを持ち合わせている人はたくさんいる。そのすべてを備えている人は少ない。この10人に1人の逸材がマネジャーに任命されれば、自然にチームメンバーや顧客のエンゲージメントを高め、成績優秀な社員をつなぎとめ、高い生産性につながる文化を維持する。これらの成果が一体となり、優れたマネジャーは平均的なマネジャーよりも約48%多くの利益を会社にもたらしている。
もう1つ留意すべき点がある。前述の逸材とは別に、ほどほどのマネジメント能力を発揮する者が10人に2人の割合で存在する。彼らにコーチングを行い計画的に育成すれば、高いレベルでマネジャーの役割を果たせるようになる。
管理職のみを対象としたマネジメント能力の測定結果を、全体の結果と比較すると、優秀な人材の割合は前者のほうが少しだけ高いことがわかった。つまり、現在管理職にある人々のほぼ5人に1人(18%)が、高レベルのマネジメント能力を発揮している(10人中、別の2人はほどほどの能力を持っている)。それでもやはり、企業が優れたマネジメント人材を管理職に登用できていない割合は82%に達しているわけだ。従業員エンゲージメント、そして高業績を促進する文化への影響を考えれば、これは米国においても世界全体においても憂慮すべき問題だ。
たしかにどのマネジャーも、チームの意欲を高める方法をある程度は習得できるだろう。だが、「生まれつきの資質」がなければ、日々の経験のなかでマネジャーとチームの双方が燃え尽きてしまう。ここで言う生まれつきの資質とは、個々人に合った対応をする、個々人のニーズと長所に注目する、チームメンバーを率直に評価する、人々を大義の下に結集させる、そしてプロセスを効率的に実行する、という能力である。先に述べたように、非効率な人選方法によって企業は毎年数千億ドル規模の代償を払っている。