LIXILのグローバル化とは?

石倉 LIXILとして統合した5社は、どちらかと言えばドメスティックな企業ばかりだと思いますが、それがいきなり「住生活産業のグローバルリーダー」をビジョンに掲げています。社員や関係者には、戸惑いがあっても当然だと思いますが、そのあたり現状はいかがですか。

松村 おっしゃる通りで、社員は戸惑いながらも、必死で目を見開き、「自分は何をすべきか」「自分には何ができるか」と自問自答している状況です。
 ただ、海外に工場はあったので「グローバル時代にどのように対応していけばよいのか」という検討作業はなされていましたし、国内の住宅関連市場は人口減でシュリンクするばかりですから、次の事業展開についての問題意識や危機感は共有できる状況にありました。そこに藤森(義明CEO)のような、グローバル化について明確な絵を描ける人がCEOとなり、LIXILとしての方向性が見えてきたのです。

石倉 LIXILのグローバル化とは、どんなイメージなのでしょうか。

松村 例えばトイレやお風呂などの水まわり事業では、日本のように優れたテクノロジーが活用されている国や地域もあれば、ヨーロッパのように文化やデザイン性を重視した地域もあります。その一方で、自宅にトイレがない生活を送る地域や国もあります。高付加価値商品で豊かな暮らしを提供していく一方、世界の衛生問題にも目を向け、地域の経済発展に寄与できる新しいビジネスモデルを考える。このグローバルな思考こそLIXILにおけるグローバル化だと考えています。

自らの仕事とグローバル化の接点を
いかに実感してもらうか

石倉 今、グローバルな思考とおっしゃいましたが、これが実際現場で働いている人たちには、なかなかピンとこないのではないでしょうか。
 先日も「グローバルリーダーへの一歩」というセミナーで、商社で食品を担当する若い人から「『グローバルリーダーは、世界の課題を視野に入れた高い志を持つ』と言われても、自分の日々の仕事と結びつかず、どうしてよいかわからない」という質問を受けました。食品の流通は、貧困や食糧問題という、今まさに世界が解決に苦慮している課題に深く関連しているので、そのような視点から自分の仕事を捉え直してみたらどうか、と答えました。今自分がやっている仕事が世界につながっていることを実感できない、「グローバル化」がスローガンだけにとどまってしまうことはよくあると思いますが。

松村 LIXILは、「住生活産業のグローバルリーダーになる」というビジョンを掲げてまだ3年目ですから、ピンとこないことも多いと思います。私の立場では、社内コミュニケーションを通じて、仕事と世界の結びつきを訴えています。
 また、海外企業を含めたM&Aがメディアで報道されることも多く、社会からは「グローバル化を進める企業」と見られます。実感がなくても、世界でさまざまな活動をしているわけですから、社員にもグローバル企業の一員であると意識してもらわなければなりません。広報部門の責任者として、グローバル企業として見られる緊張感や責任感を持ち、社内外でコミュニケーションしています。

石倉 「住生活産業のグローバルリーダー」というビジョンを実現しようとする会社の積極的、かつ多岐にわたる具体的な行動が見えてきて、社員も「会社が変わってきている」と分かってくるのですね。

松村 今は、私も含めてストレッチ中ということでしょうか。建材・設備機器メーカーとして、海外でも高い評価を受けている建築家の方々とお付き合いをさせていただく中で、世界規模での環境問題や未来の住まいを考えていらっしゃる先生たちの知見に触れられる機会が多くあります。彼らの考えを知ることで、新たなアイデアが生まれることもあります。