石倉 LIXILは5つの会社が統合しただけに、グローバル化だけでなく事業そのもの、組織のあり方などすべてにおいて新たなアイデンティティを創り出す過程にありますね。企業理念やCSR理念などはすでにお持ちですが、「これこそLIXIL」というアイデンティティは、具体的にどう形成されているのでしょうか。

松村 組織構造では、LIXILにはグローバル化に向けた最高意思決定機関「GMC=Global Management Committee」という藤森以下、グループ幹部17人で構成される組織があります。M&Aで新たに加わった企業のメンバーも含め、ここで経営に関わるさまざまな事柄を議論し、方針を決定します。その方針に基づいて、各ファンクションの具体的な施策を練っていきます。
 CSRでは「Diversity」「Integrity」といったキーワードが明確になってきました。根底にあるのは、グローバル企業になるという共通ビジョンであり、そのために何が必要かという問題意識です。

石倉 日本の企業や業界でいつも私が不思議に思うのは、「グローバル化」「人材が大事」と声高に言うわりには、企業人や業界人が、日々、改善や変革を考え、実行し続けるような仕組みがほとんどないことです。だから、いろいろなスローガンを掲げ、検討会を立ち上げても尻切れトンボで、総合的な変革に結びつかないことが多いと思うのです。
「住生活産業のグローバルリーダー」というLIXILのメッセージ自体は、さほど目新しいものではないように感じますが、LIXILはグローバル化に邁進している。藤森さんという強いリーダーがいるのはもちろんですが、LIXILが5社の統合だったからかえってよかったという面もあるのではないでしょうか。

松村 おっしゃる通りですね。社名も変わり、LIXILとして全く新しい文化を作ってきました。だから前に進みやすい、いえ、進まざるを得ない状況に追い込まれた、というほうが近いでしょう。

現場の意識改革から
トップリーダー育成まで

石倉 グローバル人材の育成策はどうでしょうか。LIXILの人事総務担当は、藤森さんと同じくGE出身の八木(洋介)副社長ですが、八木さんは、LIXILでグローバル人材をどのように育てようとされているのでしょうか。

松村 一言で言えば、出る杭は打たぬどころかどんどん出てこい、ということです。目標管理制度、専門職や管理職、新人のための各種の研修など、日本企業にある人事育成策はLIXILにもあります。しかし、八木の人材育成で最も特徴的なのは、リーダー育成に重点が置かれていることです。

石倉 どんなものでしょうか。

松村 次世代のリーダーを養成するために、リーダーシップトレーニングを行っています。今年で3期目となる「エグゼクティブ・リーダーシップ・トレーニング」では、受講生たちが1年近くをかけてワークショップとチームプロジェクトに取り組み、社長になったという仮定で社長就任演説を行います。2013年には、「シニア・リーダーシップ・トレーニング」「ジュニア・リーダーシップ・トレーニング」、今年からは「フレッシュ・リーダーシップ・トレーニング」も始まり、全階層でリーダーシップを学ぶ機会を提供しています。研修には、藤森と八木も参加します。リーダーとして必要な能力を探り、それを育成プランに具体化していきます。