【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
ノルベルト・ハーマン
(Norbert Herrmann)コンサルタント
バーバラ D. ボブジャーグ(Barbara D. Bovbjerg)アメリカ会計検査院 ディレクター
ディエトマ・マルティナ(Dietmar Martina)ドイツ・テレコム ディレクター
アイリーン A. カメリック(Eileen A. Kamerick)ハイドリック・アンド・ストラグルズ CFO

[ケース・ライター]
コーネリア・ガイスラー
(Cornelia Geissler)『ハーバード・ビジネス・マネジャー』シニア・エディター

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

超高齢社会がやってくると──

 人事部長のフランク・ヘーベラーは眉をひそめた。いましがた胸躍らせて開けた封筒には、メディグノスティックスが今後20年間にわたって競争力を維持するうえで欠かせない人事戦略のリポートが入っていた。これは、彼が何カ月もかけた労作である。

 ところが、表紙に貼られた黄色の〈ポストイット〉には、人事担当バイス・プレジデント、エルビン・バオムの端麗な筆跡で「優先事項にあらず」と書かれていた。ヘーベラーは、リポートのバインダーがきれいなままであることに気づいて、「だれも中身を読んでいないのではなかろうか」といぶかった。

 ヘーベラーはがっくり肩を落とした。この半年間、このリポートに心血を注いできたのだから。あらゆる調査も、いかなるデータもこの先、大変な時代が待ち受けていることを示していた。すなわち、ドイツ全体の平均年齢は着実に上昇しているのだ。その影響を被ることは、中堅製薬会社のメディグノスティックスもけっして例外ではなかった。