●頭が柔軟な人ほど正確な予測ができる
これは、テトロックが示したキツネとハリネズミの違いを思い出させる。参加者の自己申告によるキツネかハリネズミかの分類は、実際の成績と相関しなかった。しかし思考の柔軟性を試す一般的なテストを実施したところ、その結果は予測の精度と一致した。心理学者の中には、柔軟性は時間が経ってもほとんど変わらない性格特性と考える人もいる。しかし一部の研究によれば、人間の柔軟性は状況によって変化する。
●確率を考える訓練によって、思考のバイアスを防げる
参加者の一部は「確率推論」の訓練を受けた。これは簡単にいえば、過去に似たような出来事がどんな結果になったかを示すデータを確認してから、未来を予測するという方法だ。人間はこの行為が驚くほど苦手で、未来は過去のケースと違う結果になる可能性が高いと考えがちである。訓練を受けた参加者は、受けなかった参加者よりも予測が正確だった。(興味深いことに、いくつかの小さなグループにシナリオ・プランニングの訓練を行ったが、確率推論の訓練と同等の効果は見られなかった。)
●急ぐと予測精度が下がる
検討する時間が長いほど、予測精度は高かった。これは特に、グループでの予測者たちに顕著であった。
●再検討と修正によって、予測精度は高まる
これは頭の柔軟性とまったく同じではないが、何らかの関係があると思われる。参加者には、1度下した判断を振り返り、新しい情報を参考にして予測を修正する機会が与えられていた。頻繁に予測を修正した人は、そうしなかった人よりも成績が良かった。
こうした発見はいずれも、予測について理解する大きな手がかりとなる。確信は、正確な予測の敵だ。予測をする際の暗黙の前提条件は、私たちは概して予測が下手なのだと認めることだろう。そうしてこそ、予測を向上させる訓練とプロセスを活用することにつながる。
ただしこれらの発見は、テトロックが以前に明らかにした「人間の予測はアルゴリズムに劣る」という点については触れていない。別の研究によれば、予測能力を高める確実な方法の1つはできる限り統計モデルに従うことだという。そして上述した「確率を考える訓練」はまさに、人間に簡単なアルゴリズムのように考えさせることだ。
予測能力を高める方法がようやくわかりかけてきたのに、その能力を機械がさまざまな分野でしのいでしまう――そう考えることもできる。しかし真の課題は、人間と機械の力をどう組み合わせるかだろう。未来を予測する大会のメリットに関するテトロックの論文は、アルゴリズムを活用した集合知の価値についても述べている。結局のところ、データと人知を組み合わせたほうが、どちらか一方だけより勝るはずだ。次なる挑戦は、両者を組み合わせるための正しいアルゴリズムを見出すことだろう。
HBR.ORG原文:What Research Tells Us About Making Accurate Predictions February 02, 2015
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ウォルター・フリック(Walter Frick)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のアソシエート・エディター。