プロフェッショナルにも
価値の「創りかた」の変化が必要な時代

藤井 建築家もコンサルタントもそうですが、いわゆる「プロフェショナル」な仕事人は価値・成果を出していくために日々大変な努力をしていると思います。そのような中で、先ほど恩師のレム・コールハース氏についてうかがって本質だと感じたのは、プロフェッショナルと言われる職業における価値の出し方の変化です。
 従来プロフェッショナルは、投げかけられた質問や悩みに全て答えることが典型的な価値の出し方であったと思います。誤解を恐れずわかりやすく言えば「自分に聞いてもらえればプロフェッショナルなので全て知っています」という世界観ですね。
 これに対して今後は、色々な方々、異質な“知”とのつながりから新たな価値を見出していくためのやり方自体を指南したり、リードできることで価値を出すことがより強く求められてきていると感じます。

白井 藤井さんの指摘される、プロフェッショナルのあり方の変化に強く共感します。一言でいうと、プロフェッショナルが持つノウハウには限界がある、ということに気づけるかどうかだと思います。
 コールハース氏は、自身の経験や価値観から建築物を産み出していくだけでは限界があることに早々に気づき、本質的に価値ある建築を創造していくために、人はどうやって建築物を取り扱っているのか、どうやって空間を使いこなしているのか、といった「観察」に行き着きました。

藤井 プロフェッショナルとしての世界観を転換させたのですね。

白井 世の中の変化は非常に激しくプロフェッショナル1人1人がその流れについていくのはとても大変です。そのような中で、自分のプロフェッショナルとしての職業観を諦めるのではなく、その限界を認め、プロダクティビティ、クリエイティビティを高める上で必要なリソースが自分や自分が所属する組織以外にあると認識し、逆にそのリソースにいかにリーチし、いかにコラボレートするかが重要と思いますし、私自身も大変興味があります。

藤井 おっしゃるとおりです。これを実践していく上で難しいのは、自分および自分が所属する組織以外のリソースは、当然志向するベクトルが異なる場合があるという点です。外部リソースとともにサステナブルな関係、創発的な関係を創っていく際に、特にプロフェッショナルという仕事の特性上、難易度がより高くなると感じます。

白井 そうですね。異質なプロフェッショナル同士がコラボレートしていく上では、結局、同じベクトルを持てるかがキーになると思います。

藤井 私は、ベクトルを同じくするための魔法の杖は、「大義」にあると思います。社会課題解決という「大義」の下であれば、ベクトルを合わせることが可能になる。そのためにも、自ら取り組むことの大義を常に探し、常に大義を強化していくことが重要だと思います。
 ただし、同じ方向を向いても、それに向かって走る際の時間軸はそれぞれのセクターで大きく異なります。特にパブリックセクター、ソーシャルセクターの時間軸と、ビジネスセクターの時間軸は大きく異なります。従ってトライセクターでコラボレートしていく上では、やはり、それぞれの時間軸を理解し、架け橋となるブリッジパーソンの存在が鍵になると思います。私たちもブリッジパーソンでありたいですね。

白井 建築とビジネスという観点で、今後もぜひ連携していければと思います。

藤井 こちらこそぜひ宜しくお願い致します。これまで2回に渡り、大変興味深いお話を多数頂き、本当にありがとうございました。