デルは売上げの8割を法人顧客から稼いでいる

 デルコンピュータ(以下デル)は、徹底したサプライチェーン・マネジメントによって成功した直販メーカーとして有名である。

 調達から物流・配送、カスタマー・サポートに至るまで、あらゆるプロセスを一元管理し、そこにサプライヤーや顧客までをも統合した「バーチャル・インテグレーション」(仮想統合)、いわゆる「デル・モデル」を実現した。

 実は、その売上げの約8割は法人顧客によるものである。その顧客は、ファースト・ユニオン、ネスレ、ユニリーバ、ノードストローム、シェル石油、ボーイング、アメリカ・トヨタ自動車、ソニーなどの大企業のほか、中小企業や教育機関など、多数の企業や団体が名を連ねている。デルはこれら法人顧客を対象にそのニーズを読み取り、利便性を高めるサービスに腐心している。

 マイケル・デルは次のように述べている[注]。

「デルが単なるPC(パソコン)ベンダーにとどまるつもりはありません。つまり、デルは顧客企業が利用しているPCをサポートする『IT部門』になろうとしているのです。………顧客企業とデルは同じ現場で同じ時間を過ごし、同じ空気を吸っています」

 このように単なるパソコン・メーカーの領域にとどまらず、顧客企業の企業価値を高める「インターネット・インフラストラクチャー・カンパニー」を目指していると言えよう。

 たとえば、年に数回、アジア・パシフィック、日本、アメリカ、ヨーロッパの重要顧客企業を集めて、「プラチナ・カウンシル」というミーティングを開催している。ここでは、将来のIT動向、同社の製品計画などを公表する一方、顧客企業で起こっている問題やニーズを収集している。

「我々は、顧客に何が起こっているのかを予測し、それに備えるための支援をしようとしているのです。ひいては需要を予測する手段となり、デルにも役立つのです。つまり、互いの役に立つのです」とデルは言う。

 また、「プレミア・ページ」と呼ばれる法人専用のサイトも、この延長線上にあるサービスである。大手のERP(業務統合パッケージ)ベンダーと提携して「プレミア・コマース」という新たな概念を打ち出し、各ベンダーのシステムを統合させている。これによって、顧客企業は発注や営業担当者との連絡業務、認証といったワークフローを合理化できる。

 2000年3月現在、プレミア・ぺージを活用する顧客は全世界で4万社にも達しており、同サービスの利用者は増加の一途をたどっている。