攻めこそガバナンスの要諦
受容可能なリスク基準の共有を
監査等委員会設置会社の制度が導入されたことで、機関設計として監査役設置会社、指名委員会等設置会社を含む三つの選択肢ができた。このため、取締役会の改革を議論する際に、どの機関設計を選ぶかという法律論から入ってしまうケースが見受けられる。
だが、「まずは取締役会の役割を十分に理解する必要があります。そして、その役割を果たすには、会社法が認める三つの機関設計のどれが利用しやすいか、という順序で考えるべきです」と松下氏は言う。
これまでに数多くの取締役会改革の実務をサポートしてきた経験から両氏は、「取締役会で具体的に何を議論するかを決めることが非常に重要で、それが取締役会の役割を明確化することにもつながります」とアドバイスする。日本の企業では、会社法で定められた事項と業務執行サイドが上程した案件を決議しているだけの取締役会がほとんどだ。だからこそ、マネジメントボード(業務執行役員会)が機能していれば、取締役会は追認すればいいとか、社外取締役がいても有意義な議論にならないといった意見が出てくる。
実際、トーマツによるアンケート調査の限りにおいて、日本の取締役会で方針の決定が議題とされているのは全体の10%にも満たないという。
社外取締役が個別の事業案件、投資案件についてアドバイス以上の意見を述べることは現実問題として難しいだろうが、大方針の決定ならば十分に議論に参加できるはずだ。
また、CGCにおいては健全なリスクテイクによって日本企業が“稼ぐ力”を取り戻す「攻めのガバナンス」の必要性を強調している。「それを実践するためには、とるべきリスクの種類を決め、どこまで受容するかというリスク水準を設定しなければなりません」(北爪氏)。そうしたフレームワークを取締役会であらかじめきちんと議論しておけば、例えば投資案件についてもきちんとリスクの受容可能性について議論でき、機会への投資を促すことも可能になる。
「欧米ではそれを繰り返すことで、どのようなリスクをどこまで受容するかという、リスクアペタイト・フレームワークと呼ばれるものが、業務執行の現場にも浸透、適正な範囲でリスクテイクする姿勢を醸成しています」と松下氏は説明する。
トーマツでは、グローバルファームとしての知見を活用し、ガバナンスを構成する各種のフレームワーク構築から仕組みへの落とし込み、運用支援に至るまで、一気通貫でサポートし、取締役会改革を実務面で支える経験を積んできた。その蓄積を生かし、「日本企業の攻めのガバナンスをしっかりと支えていきたい」と両氏は口を揃えた。
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