個人の内面にある力が、社会を変える時代

 ここまで、どのようにして“ひらめき”の瞬間に近づいていくのか、そして顧客に寄り添いながら、何を、どのように組み合わせながら新たな「価値」を生み出していくのかを考えてきた。これらは、変革のための起業家的な考え方・行動の礎になるものだ。しかし、“これから”の時代を意識すれば、いくつかの大切なキーワードが新たに組み合わされていくことになるだろう。

 「起業家的な変革×グローバル」はイメージがしやすい。一方で、現在、大きな潮流となりつつあるものが「起業家的な変革×社会的(ソーシャル)ニーズ」であり、「起業家的な変革×持続可能な社会」である。まさにグローバルな環境の中で、起業家的な人たち、起業家的な組織が、社会的な価値を生み出そうと立ち上がっている。また、エコなこと、“グリーン”なことに関連した市場には、大きな潜在力が秘められており、有力な21世紀の成長エンジンである、というようなレポートも相次いで報告されている。まさに大きな「機会の窓」が開いている。

 これからの変革を担う起業家的なクリエイティビティを支えるのは、個人の持つ内的モチベーションであることが分かっている(注4)。好奇心を持ち自分のやりたいことを見定め、どう進めていくか、チャレンジする方法を考える。自分で決めることのできる範囲が広く、実現の目処が立ってくるときの満足感を楽しむ。このような内的モチベーションが高い状態は、明らかにクリエイティビティを高めている。一方で、外からの評価、監視、報告、報酬などのコントロールに関係する外的モチベーションは、クリエイティビティを高めることはなく、むしろ内的モチベーションを毀損する役割を果たす。換言すれば、これまでの伝統的なマネージャーの仕事、その大半の必要性は次第に薄れていく。

 21世紀は、個人の内面から湧き出るモチベーションが、個人の潜在的創造力を開花させ、多くのビジネスの機会も捉えながら、結果としての高い文明を達成していく世紀になりそうだ。乗り遅れてはいけない。


(注1)Dyer, J.H., Gregersen, H.D., and Christensen, C.M., 2009, The innovator’s DNA, Harvard Business Review, December.

(注2)Cooper, R. and Edgett, S., 2008, Ideation for product innovation: What are the best methods?, PDMA Vision Magazine, Product Development Management Association, March.

(注3)東出浩教、2014、第7章 ベンチャー精神を育む『場』をつくる、仕事に役立つ経営学、日本経済新聞出版社

(注4)Amabile, T.M., 1993, Motivational synergy: Toward new conceptualizations of intrinsic and extrinsic motivation in the work place, Human Resource Management Review, 3, 185-201. 他