P&G(Procter & Gamble):コネクト・アンド・ディベロップ戦略
ウォルマート(Wal-Mart Stores):ビジネス生態系の戦略
シルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil):ブルー・オーシャン戦略
アドビ・システムズ(Adobe Systems):イノベーションの上市戦略
利豊集団(Li & Fung Group):レバレッジ成長戦略
アンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch):大企業の「反」革命戦略
レッドハット(Red Hat):インテグレーティブ・シンキング
ナイキ(Nike):マーケティング・フォーカスの転換
ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways):顧客経験のデザイン
ハラーズ・エンタテインメント(Harrah's Entertainment):カスタマー・フォーカス経営
LVMH(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton):スター・ブランドの育成法
エイボン・プロダクツ(Avon Products):コーズ・ブランディング
ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard):第三世界との共進化
ケンダル・ジャクソン(Kendall-Jackson):新贅沢財マーケティング
ユニリーバ(Unilever):「スピルバーグ式」CM効果分析

P&G(Procter & Gamble)
コネクト・アンド・ディベロップ戦略

ラリー・ヒューストン(Larry Huston)
元 プロクター・アンド・ギャンブル バイス・プレジデント

ナビル・サッカブ(Nabil Sakkab)
プロクター・アンド・ギャンブル シニア・バイス・プレジデント

プロクター・アンド・ギャンブルでは、オープン・イノベーションが奏功し、全社のイノベーションの35%超、売上高にして数十億ドルを生み出している。この戦略モデルとその仕組みについて、推進担当者みずからが語る。

Procter & Gamble
オハイオ州シンシナティに本社を置く世界的な消費財メーカー。洗濯用洗剤〈タイド〉〈アリエール〉、紙おむつ〈パンパース〉、ヘア・ケア製品〈パンテーン〉、オーラル・ケア〈クレスト〉など、売上高が10億ドル以上のブランドが全部で22ブランドある。人材輩出企業としての評価も高い。

R&DからC&Dへ

 ほとんどの成熟企業は、年4~6%の有機的成長(M&Aに頼らない自力での成長)を求められている。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で言えば、2006年だけで40億ドル相当の事業を創出しなければならない。

 つい最近まで、つまり世の企業が規模の拡大を図り、競争が熾烈化する前であれば、社内のR&D活動だけでもこのような成長を実現しえた。事実、何十年にもわたるP&Gの驚異的成長を支えてきたのは、まがうかたなく社内イノベーションだった。R&D拠点をグローバルに構築し、世界クラスの人材の採用と維持に努めてきた。

 P&Gが年商250億ドルの規模だった時代ならば、これでよかった。現在のP&Gは、もはや年商700億ドルに手が届こうかという企業である。

 1990年代末の時点で、P&Gの場合、社内開発だけに頼っていては、早晩成長が頭打ちになるであろうことがわかっていた。イノベーションを取り巻く状況が世界的に変化していたにもかかわらず、P&Gのイノベーション・モデルは80年代末からまったく進歩していなかった。つまり、中央集権的アプローチという、旧態依然のままだったのである。