サウスウエスト航空の人材担当トップが語る、価値観(サウスウエスト・ウェイ)の重要性。従業員第一主義で知られる同社だが、単に厚遇によって愛社精神を高めているわけではない。従業員側にも、価値観の共有と実践が非常に強く問われるようだ。
我々サウスウエスト航空には、求人への応募が2秒に1件寄せられる。航空業界は人手不足のため、多数の応募者(特に工学・技術分野の経歴の持ち主)を当社が片端から採用したくなるだろう、と思う人もいるかもしれない。
しかし当社は創業以来、1971年6月18日の初フライト以前から、非常に厳格な採用選考を行っている。2015年だけでいえば、28万7422件の履歴書が審査され、10万2112人が候補者として面接を受け、採用に至ったのは6582人だ。つまり全応募者の2%以下となる。
これほど慎重に選考する理由は、会社と従業員の絆(エンゲージメント)は双方向であるべきだと我々が考えているからだ。雇用者側は従業員の愛社精神を保つために、十分な給与と手当て、および能力開発と昇進の機会を与え、協働の精神と使命感に基づく組織文化を築かなければならない。しかしそれだけでなく、最初から会社に合っている人、つまり組織と同じ価値観を元々持っている人を雇う必要があるのだ。
サウスウエスト航空の採用では、技能よりも3つの資質を重視する。
●戦士の精神(warrior spirit):卓越したいという欲求、勇気あふれる行動、粘り強さ、革新への意欲、等。
●召使いの心(servant's heart):他者のことを第一に考える、すべての人々に敬意を持って接する、積極的に顧客に奉仕する、等。
●楽しいことを愛する姿勢(fun-loving attitude):情熱あふれるチームプレーヤー、仕事を楽しむ、自分について深刻に考えすぎない、等。
我々は上記の期待(サウスウエスト・ウェイ)を明確に示すことが重要だと悟り、すべての職務記述書に明記し、面接の方法もこれらに沿っている。「適任者かどうかは、見ればわかる」とは考えず、「この候補者は、すでに我々と同じ価値観を持って生きているだろうか」と考えるのだ。それを確かめるために、行動面接の手法に基づいて質問する。たとえば、候補者が情熱的なチームプレーヤーかどうかを評価する時には、「仲間の成功を助けるために、自分の義務を超えて尽力した具体例」を話すよう求める。
また、応募職種について候補者が本当に理解しているか、それが当人のキャリア上の目標と一致しているかを見極めるために、「キャリア・モチベーション面接」というものも行う。
当然ながら、ある種の職種には特定の技能が求められる。いかに優れた態度の候補者でも、飛行機を操縦できなければパイロットとして雇うわけはない。しかし、技能面の要件を同程度に満たす2人が候補に残った場合、サウスウエストと同じ価値観を持つ人が採用される。そしてより重要な点だが、技能は満たしていてもその価値観が当社と一致しない候補者に、採用を申し出ることはけっしてない。その募集職がどれほど空き続けることになっても、である。
能力開発と昇進の慣行も、サウスウエスト・ウェイを基準にしている。毎年の業績考課と360度評価では、従業員は達成した成果だけでなく、それを「どのように」達成したかも査定される。つまり戦士の精神、召使いの心、楽しいことを愛する姿勢について、実際に採点されるのだ。これらの資質を確実に体現している者が、リーダー職へと昇進する。ディレクター以上の職位の候補者は、私(人材担当バイスプレジデント)もしくはジェフ・ラム(コーポレート・サービス担当エグゼクティブ・バイスプレジデント)の最終面接を受ける。
こうしたやり方は時間がかかる。しかし、ここまで徹底することで、サウスウエストのリーダーたちが勤勉、無私、情熱を体現し、全従業員の模範となるよう万全を期しているのだ。最良の人材を惹きつけて留める能力をいかに高めるか、幹部たちは頻繁に話し合う。そして毎回意見が一致するのは、価値観を重視した採用と昇進の慣行は絶対に変えてはならないということだ。
当社は2014年に従業員アンケートを実施し、自分の仕事は次のうちどれだと思うかを尋ねた。「単なる仕事」「ステップアップのための機会」「使命/天職(calling)」。すると75%近くが「使命/天職」を選び、86%がサウスウエストで働くことに誇りを感じていると答えた。この結果を見る限り、価値観重視の採用方針は、従業員にとっても会社にとっても有益であると思われる。
HBR.ORG原文:How Southwest Airlines Hires Such Dedicated People December 02, 2015
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ジュリー・ウェバー(Julie Weber)
サウスウエスト航空の人材担当バイスプレジデント。同社の人材に関するすべてを統括する。