サービスの専門家である筆者らは、組織文化をこう定義する――「不在のCEOに代わって、従業員の裁量を導くもの」。ザッポス、ジェットブルーなど卓越したサービス企業の文化に共通する「3つのC」を紹介する。
人々の企業観を大まかに要約すれば、「企業の卓越性=組織設計×組織文化」となる。リーダーの仕事は、両方をよくすることだ。優れた組織構造をつくり、それを活かすための(必ずしも明文化されない)ルールと価値観を育む必要がある。
人は設計面の課題に引き付けられる傾向がある。戦略やビジネスモデル、インセンティブの仕組みといったものだ。設計や仕組みを改革する手段は、組織図の描き直しやストックオプションの発行といった形で、具体的に示すことができる。経営コンサルタントを雇って助けてもらうこともできる。
だが、「文化」とはいったい何なのだろうか。それを優れたものにするとは、具体的にどういうことを指すのだろうか。
組織文化とは簡単にいえば、従業員が裁量に基づいて行動する際の指針となり、就業規則に書かれていない部分を担うものだ。文化は、前例のないサービスを要求された時にどう対応すべきかを示してくれる。思いついたアイデアを上司に打ち明けてみるべきかどうか、あるいは問題を表沙汰にすべきか隠すべきかを教えてくれる。従業員は日に何百もの意思決定を独断で下しているが、その道しるべとなるのが文化だ。CEOが部屋にいない時(つまりほとんどの場合)にどうすべきかを教えてくれる。
我々は『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』を執筆する過程で、卓越したサービス文化を持つ企業を調査し、そこに共通するパターンを探った。対象企業はすべて、我々が「組織文化の3C」と呼ぶ側面において卓越していた。