コダックは、デジタル化への初動こそ遅れたものの、その後、猛追してデジタル変革を成し遂げた。にもかかわらず、破綻を迎えた原因は何か。エコシステムの観点から掘り下げることで、IoT時代に生き残る企業の条件が見えてくる。
破壊的変化はその性質を変えている。かつての破壊は、個別の製品・サービスのレベルにおいて、顧客への提供価値を高める技術競争の過程で生じていた。ディスクドライブなら3.5インチに対して2.5インチ、テレビならブラウン管に対して液晶、銀行なら実店舗に対してオンライン、といった具合だ。
いまや破壊的変化は、エコシステムのレベルで生じている。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)は、この変化のよい例だ。すべての産業は、センサー、ネット接続性、ソフトウェアによって様相が一変しつつある。農業から自動車、航空、エネルギーまで、新旧問わずどの産業もその影響を免れない。
この環境での成功を左右するのは、デジタル面の機能に優れた製品を生み出すことだけではない。エコシステムレベルの戦略をいかに構築するかが問われる。つまり、変化を続ける多くの要素を取り込んで集約し、新たな提供価値を生み出すということだ。
企業幹部は今後の10年間、エコシステムレベルの破壊的変化を理解して、読み解くことが必須となるだろう。私は過去10年間における研究、著述、コンサルティングのなかで、堅固なエコシステム戦略をいかに構築するかに焦点を当ててきた。
ビジネスリーダーは、破壊的変化に対する従来の見方を超えて焦点を拡大する必要がある。そしてこのことを説明するうえで、コダックほど最適の事例はない。