組織の予測能力を高める

 いま、あなたの会社の予測能力を劇的に改善できると想像してほしい。ただしそのためには、自社の予測やその結果を導いた予測者たちがどれほど当てにならないかをさらけ出す必要がある。

 米国のインテリジェンス・コミュニティはそれを実践し、目覚ましい成果を上げた。2002年10月、米国国家情報会議(NIC)は、イラクが化学兵器や生物兵器を保有しており、大量破壊兵器を精力的に製造し続けているとの公式見解を発表した。言うまでもなく、その判断ははなはだしい間違いであった。年間500億ドルもの予算がつけられているNICは、判断を誤ったことに動揺した。そして組織上の重大欠陥が露呈しかねない可能性も認識したうえで、より的確な判断を下せる方法を明確にすべく乗り出したのだ。

 その結果、いくつかの研究プログラムが生まれた。その中の一つが、複数年にわたり実施した大規模な予測をめぐるトーナメントである。本稿執筆者の一人であるフィリップ・テトロックが共同リーダーを務めたこのトーナメントは「優れた判断力プロジェクト」(GJP:The Good Judgment Project)と呼ばれ、数千人のアマチュアと情報機関の経験豊富なアナリストを次々と競わせるものだ。