長期的には資金を節約でき
チャンスもつかみやすくなる

 時代がますます不透明・不安定になる中、ほとんどの企業は予測の精度を上げ、機動性を高めようとする。これはこれで重要だが、どちらの方法にも限界がある。変化の激しい時代には、予測はたちまち時代遅れになる。また、市場の変化に対する素早い反応は重要ではあるが、「完璧な」順応性や機動性を実現するのは(不可能ではないにしても)高くつく。

 既存企業の場合、これを補完する──そしてもっと効果的であろう──やり方は、不確実性へのヘッジとして「戦略オプション」を用いることだ。金融オプションが投資家をリスクから守り、証券価格や商品相場の変動から利益を上げる手段となりうるように、戦略オプションは企業を保護し、ライバルの動向、テクノロジーの急激な進歩、新市場の台頭、需要の急変など、予期せぬ事態に直面しても企業が成功できるようにする。戦略オプションを使えば、事前調査をし、資本を節約し、情勢がもっとはっきりするまで最終判断を遅らせることができる。

 鉱業権のオプションの購入、新しい航空機の納入枠の確保など、以前から広く使われている戦略オプションもある一方、あまり知られていなかったり、活用されていなかったりするものもある。本稿でスポットを当てる「臨時組織」「予備的買収」「使い捨て工場」の3つもそうだ。