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「ガラスの天井」は大きな問題ではない
診断が間違っていれば、効果的な処方箋など示しようがない。経営層に女性が少ない背景には、まさにこのような事情がある。強い問題意識の持ち主たちが、解決に向けて懸命に努力しているにもかかわらず、症状を読み違えたせいで、さしたる成果を上げられずにいる。
現状が好ましくないのは明らかである。女性の社会進出が始まって久しい。事実、アメリカでは、マネジャー層の40%以上を女性が占めるに至っている。にもかかわらず、執行役員クラスに目を転じると、女性は皆無に近い。
たとえば「フォーチュン500」の会長、社長、CEO、COOなど、きわめて高額の報酬を得ている層では、女性の比率はわずか6%である。CEOに限ると何と2%、取締役全体では15%である。
他の先進国でも状況は五十歩百歩だ。EU(欧州連合)各国の上場企業50社で見ても、執行役員クラスに占める女性の比率は平均11%、CEOと取締役会長だけに限ると4%である。
「フォーチュン・グローバル500」のなかで、女性がCEOを務めているのは7社、つまり全体の1%にすぎない。ことほど左様に、権力と権威の高い地位に女性が少ないのはいったいなぜだろうか。
1986年、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のキャロル・ハイモウィッツとティモシー・シェルハートは、こう喝破した。「出世の階段を着実に上ってきた女性も、やがて目に見えないバリアにぶつかる。経営陣の座まではあと少しなのに、どうしてもこの『ガラスの天井』を破れない」
この比喩は、記事に添えられたイラストともどもわかりやすく、多くの読者の共感を呼んだ。ゴールがすぐそこに見えていながら、そこにたどり着けないもどかしさをみごとにとらえていたのである。
かつては、このように見えないバリアがたしかに存在していた。80年代に執行役員を務めていた人たちでさえ、経営層への道が公然と閉ざされていた時代を経験している。