既存の人材マネジメントの行き詰まり

 現代の企業経営者たちは、相も変わらず人材マネジメントの失敗に手を焼いている。過去数十年間、アメリカを筆頭に、従来の人材マネジメントがおしなべて機能不全に陥り、その結果、企業は人材過剰と人材不足の間をふらついてきた。

 せんじ詰めれば、人材マネジメントは人的資本ニーズを予測したうえで、そのようなニーズを満たす計画を策定するだけのものである。この課題に対処する方法には、現在、大きく分けて2つの陣営がある。両者には明白な違いがあるが、効果という点では五十歩百歩といえる。

 一つは、ほとんどの企業で見られる「無策」という対応である。つまり、いっさい人材の需要予測をせず、需要への対応策も計画しないというものだ。「人材マネジメント」という言葉が無意味に響くのもこのためである。

 それゆえ、行き当たりばったりで、人材不足については中途採用に極度に依存することになる。とはいえ、かつては幹部候補者もだぶついていたが、いまは足りないくらいだ。

 第2の陣営は、1950年代から続く、もっぱら伝統的大企業によく見られるものだが、複雑かつ官僚主義的なモデルにより、人材需要の予測とサクセッション・プラン(後継者育成計画)を旨としている。

 このモデルは、事業の先行きが予測しやすかった時代のもので、したがって、もはや過去の遺物である。環境変化が激しい現在にあっては、不正確であり、しかもコストがかさむため、使い物にならない。

 企業は現在、不確実性を考慮した人材マネジメントに取り組まなければならないが、そのためには抜本的な改革が不可欠である。

 幸いなことに、すでにその手本になるものがある。それはSCMである。これは、不確実な状況下で需要を予測し、需給のギャップを手当てすることを目的に、何十年もかけて磨き上げられてきた。