上司は、社員の時間に対する第1の影響要因だ。その影響力たるや、社員の家族よりも強い。影響力の強さを上司自身よく理解できていないのだろうし、休暇中にも仕事をする自分の習慣がどんな結果を招くかも、もちろん意識していないのだろう。

 管理職の休暇中の行動は、部下の休暇を認めるかどうかとも関連している。休暇中も常に仕事状況をチェックする管理職の3分の1以上(35%)が、「会社からのプレッシャーがあるので、部下の休暇申請を承認できない」と答えているのだ。休暇中にたまにしかチェックしない管理職の場合は20%、完全に仕事から離れる管理職ではわずか17%である。

 休暇中も常に連絡を取ることを求める企業文化が及ぼす悪影響ははっきりしているが、逆に、完全な休暇の価値を認める企業には大きなメリットがある。休暇は社員にとって重要問題だ。各種の福利厚生のうち、重要度は「医療」に次いで第2位であり、「退職金」「ボーナス」「勤務形態の柔軟性」よりも高い。休暇は、企業文化をよりよくするチャンスと見るべきなのだ。

 デロイト・コンサルティングのCEOであるジム・モファットはあるとき、部下たちにメールを送った後に、1つの気づきを得た。スコットランドでの休暇の前に社員に送ったメールには、当面の仕事すべてに対して細かい指示を記した後、おざなりな結びの言葉を書いた。「9月初めのレーバーデーの連休までに休みを取るように。できればの話だが」。この「できれば」とはすなわち「休むな」と言っているに等しいのだと、いまはモファットも理解している。

 そのことに気づいたのは、友人でもある同僚が、返信メールでアドバイスをくれたからだ。優れた部下に的確な指示を与えているのだから、休暇中にメールをする必要はまったくない、というのである。それができないというのなら、メールを数本送ったところでどうにも手の施しようがないはずだ、と。

 以来、モファットは休暇中には一切メールを送らなくなったという。「まったく連絡を取らないと決めると、休暇がどれほど充実するか、驚くだろう。そして休暇から戻ったとき、部下たちの有能さにも驚くはずだ。そしてそれゆえ、あなたはより自信に満ちた優れたリーダーになれるはずだ」

 先に挙げた企業文化を壊す2ステップに立ち返り、これをどう変えるべきか考えてみよう。こうするのはどうだろうか。

 ステップ1:休暇を取る。
 ステップ2:休暇中、部下を信用して仕事を任せる。

 このアプローチを取れば、部下が新しい能力や才能を持っていることに気づき、そのスキルを伸ばし、最終的には事業を成長させることにつながる。

 仕事とテクノロジーは分かちがたく結びついている。休暇の力と価値を理解し、休暇を奨励されていると社員が感じられる環境をつくることは、結果的にエンゲージメントの高い労働力を育てるはずだ。社員は評価されたと感じ、モチベーションが上がり、本気で仕事に取り組む。どれも永続的なインパクトがある。


HBR.ORG原文:Emailing While You’re on Vacation Is a Quick Way to Ruin Company Culture, December 05, 2017.

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ケイティ・デニス(Katie Denis)
休暇に対する米国人の姿勢と行動を変えようという全米的な運動、「プロジェクト:タイムオフ(Project: Time Off)」のチーフ・オブ・リサーチ・アンド・ストラテジー。