見落としを防ぐなど
医師のサポートが当面の目標
――どのようなAI画像解析技術の開発を目指していますか。
AIを医療に生かす究極の目標は「自動診断」だと思いますが、数年レベルでできるとは思っていません。そこに達するまでには大量のデータ分析と相当の時間が必要でしょう。
当面の目標は、医療の現場でAIが医師をサポートするような役割を担うこと。まず、少なくとも特定の症例の判定について、2~3年で平均的な医師のレベルを少しでも越えられるようなところにまでもっていきたいと思います。
仮にそうしたAIシステムができれば、診断は無理でも、医師の見落としを防いだり、診断以外の作業をサポートすることにより医師の診断以外に割く時間を減らしたりすることができる。結果、より高度な診断や治療に時間を使えるようにもなります。
診断は、ベテランの医師同士でも判断がけっこう分かれるそうです。カンファレンスで最終判断をするわけですが、その際、AIがオピニオン的な役割を担うことも考えられますね。
また、医師は患者の患部の画像を用いて診断レポートを作成していますが、その効率化に役立つAIシステムも研究中です。具体的には、「この画像はどこを写したものか」をAIが自動的に判定してラベル付けし、医師のレポート画面に画像を貼りこむような仕組みです。内視鏡画像で先行的に試してみたところ、食道と胃の上中下、十二指腸くらいであれば、98%程度の精度で分類が可能でした。
このように、医師の業務を効率化することにAIを役立てることも、広い意味で医療の発展につながると考えています。
高品質の豊富な症例画像がそろい、それを使った研究成果を通して医療という重要な分野に貢献できるこの事業は、研究者にとっても非常にやりがいのある仕事ではないでしょうか。腕に覚えのある研究者、大歓迎です。
(取材・文/河合起季 撮影/宇佐見利明)

