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所得格差の真の原因
2013年12月の晴れた朝。グーグルの社員たちがいつものように、オークランドからマウンテンビューの本社へ向かう通勤バスに乗り込もうとしていると、活動家たちが近づいてきた。一人は「グーグルなんか消え失せろ」と書いた横断幕を広げ、他の数人は怒りの理由を書いた冊子を配った。「グーグル社員は週に7日、24時間いつでも利用できる社員食堂で、タダで満腹になるまで食事ができる。それなのに、他の大勢はなけなしのカネをかき集めて、グーグル社員とその同類たちが生み出した物価高の世の中で、かろうじて食いつないでいる」。報道によれば、通勤バスの窓ガラスは投石のせいで割れていたという。
サンフランシスコの湾岸地域(ベイエリア)のそこかしこでも、列を成してシャトルバスに乗り込むアップル社員が似たような抗議活動の標的にされた。この年の冬には何回か抗議活動が起きた。参加者はたいてい20~30人だったが、影響は無視できず、グーグルは安全対策を強化した。あるグーグル社員が活動家に囲まれたバスの中から「(自分と同僚たちは)包囲されている」とツイートすると、活動家の一人は「僕らがここにいるのは、金満テクノロジー企業に、奴らのビジネスがどんな結果をもたらすかを教えるためだ」と返した。
グーグルの通勤バスを狙った抗議活動は、その2年前に起きたウォール街占拠運動とは違い、全米の関心を集めるには至らなかった。規模がはるかに小さかったうえ、おおむね一部地域に閉じた現象、すなわち、家賃の高騰と都市部のジェントリフィケーション(中間層が押し寄せてくることにより、貧困層が暮らしにくくなる現象)に対する局地的な反応と受け止められたのである。