日本でキャッシュレス化が
進まない理由

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
金融サービス マネジング・ディレクター
東京工業大学大学院修了、ミシガン大学ビジネススクール EMBA。三井住友銀行、A.T.カーニー、ベイン・アンド・カンパニー、マスターカードを経て、アクセンチュアに参画。銀行、クレジットカード会社の戦略構築、デジタライゼーション、顧客ロイヤルティ戦略、オペレーション再設計、コスト削減等を手がける。マスターカードでは、日本地区上席副社長兼営業統括責任者として市場シェア拡大を実現するシェアシフト・ディールを統括。
――カードが普及したとはいえ、日本ではキャッシュレス化がなかなか進みません。日本人はなぜ、現金が好きなのでしょうか。
長谷部 キャッシュレス決済と現金決済の割合は、ざっくり言えば本は2対8。米国は半々、韓国は日本とは逆に8対2です。日本のキャッシュレス化の拡大余地はとても大きいのですが、毎年10%弱くらいのペースで伸びているクレジットカード市場の現状からすると、米国レベルになるのにはまだまだかかります。
榮永 爆発的にキャッシュレス化が進んでいる中国と違い、日本は安全ですし、現金払いでも特に問題ないのです。コンビニでもおよそ7割が現金です。また、お店側も現金払いで困ることはないため、2~3%の手数料をとられるクレジットカードに対し、「その分、客が増えるわけでもないし、面倒くさい」となってしまっているのです。ただ今後、コンビニなどのサプライヤー側から「現金はリスクだ、業務・管理コストだ」といった考え・動きが広がってくれば大きく変わってくる可能性もあるでしょう。
長谷部 既存のクレジットカードのプレーヤーが中心となってキャッシュレス化の推進を議論しているのも、ドラスティックに進まない要因の1つかもしれません。破壊的なスキームのプレーヤーが現れない限り、急激な変化は難しいかもしれません。
――中国はものすごい勢いでキャッシュレス化が進みました。
長谷部 WeChatPayなどのスマホ決済が席巻しています。中国では電子決済の大部分がモバイル決済です。WeChatPay は数十ヶ国で利用でき、華僑系(海外在住の中国人)にも利用者が多いですね。
中国でWeChatPayは、加盟店手数料率を数十bpsでサービス提供しています。資金のプールができ、流動性が集まることによって、運用で収益を上げるモデルです。長年ゼロ金利の日本では同様のモデルが成立するのは難しいと思います。