新製品やイノベーションは失敗確率が高い。一人乗りスクーターの〈セグウェイ〉やデジタル・ビデオ・レコーダーの〈ティーボ〉など、予想をみごと裏切った製品は数知れない。なぜか。その答えは「所有効果」「現状維持バイアス」にある。これらは、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンをはじめ、行動経済学者たちの研究によって明らかにされたものだが、実学の世界には普及していなかったため、知られずにきた。この知見によれば、消費者の習慣を大きく変えないイノベーションは成功確率が高く、大幅な修正を強いるものはたいてい失敗する。本稿では、新製品を成功に導くポストモダン・マーケティングの手法を紹介する。