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消費財市場の静かなる革命
消費財市場に「静かなる革命」が起きている。現在はまさにその第1段階にあるといえるだろう。
過去数十年間にわたって、ウォルマート・ストアーズ、ベスト・バイ、マクドナルドといった巨大小売チェーンは、そろって標準化戦略を追求してきた。店舗フォーマット(店舗業態)や品揃え、業務プロセスやマーケティング・プロセスを継続的に改善し、国外に展開する場合にも、その成功方程式を適用してきた。
これらの企業がサプライヤーにも自社同様の厳しい一貫性を要求してきた結果、消費財メーカーにも消費財のサプライチェーン全体にも、標準化という価値観が深く植え込まれてきた。
しかし、このような標準化の時代もついに終わりを告げようとしている。なぜなら消費者の間に、人種、経済力、ライフスタイル、価値観の多様化が急速に進んでいるからである。
しかも、多くの地域で大型量販店が乱立しているうえに、その地域ならではの建築仕様や嗜好といった特性を台無しにする画一的なチェーン店に対して、地域の消費者からは反発の声が上がっている。
消費財市場について言うならば、もはや万人を満足させる製品やサービスなど存在しない。このような変化に対応して、小売企業や消費財メーカーのなかには、地域によって提供する製品やサービスの内容をカスタマイズするところが現れ始めている。
それらの企業はカスタマイゼーションのために、さまざまなタイプの店舗や製品ラインを展開し、価格やマーケティング、人員配置、顧客サービスについても複数の戦略を用意している。そう、従来の標準化戦略からローカライゼーション戦略へと転換を進めているのである。
そうした企業は、高度なデータ解析とイノベーティブな組織構造を組み合わせることによって、地域マネジャーの対応能力を損なうことなく、中央集約型マネジメントによる効率性も手に入れているのだ。
標準化からローカライゼーションへの転換で得られる最大の利点は、戦略を遂行するうえで不可欠なものである。製品やサービスを標準化することは、何か新しい実験的な試みに取り組もうとする意欲がそがれるうえに、競合他社に簡単に真似されてしまうおそれもある。
実際、ウォルマートのサミュエル・ウォルトンは、Kマートは自分たちの「実験室」代わりであり、ウォルマートはKマートを模倣することで成長を遂げてきたと公言している。
一方、カスタマイゼーションはそれぞれの地域において実験的な試みをしたいという意欲を高めるだけでなく、競合他社にとって模倣することはおろか、その動向を追いかけることすら難しい。ローカライゼーション戦略を巧みに実行すれば、小売企業と消費財メーカー双方が永続的な競争力を享受できるはずだ。