新たな経営モデルへのシフトは「義務」ではない、「戦略」である

 では、CSV2.0に向けてどのように取り組んでいくのか。小手先では不可能だ。SDGsが問いかけているのは、企業活動の「土台」も含めた、経営モデルのトランスフォーメーション(抜本的な再構築)なのだ。

 この変革は、SDGsから要請された「義務」と捉えるべきではない。外部から要請された義務によってやり遂げられるマグニチュードではない。企業経営者から従業員まで、社会課題の解決、社会価値の創出が自社にとって必須であることを腹落ちしていなければならない。

 そのためには「攻め」があらためて重要になる。「CSVを進めれば進めるほど競争力が上がる、売り上げが拡大する、市場シェアが伸びる」というビジネス構造に意図的にシフトしていくことが必要だ。それを動力に「守り」「土台」まで含めた改革を進めていくことが求められる。「新たな経営モデルに向けた変革」とは、すなわち、SDGs時代に市場での持続的競争優位を確立していくための純粋な「戦略」である。

 戦略の核心は、市場において競争相手に「勝つ」ことにある。逆に勝利を度外視した戦略を戦略とは呼べない。SDGsが問いかける未来においても、この核心は変わらない。求められるのは「勝ち方」の変化である。競争相手を蹴落とすために社会価値を毀損するのはもってのほかで、社会価値と経済価値の創出を同時に実現しなければ、勝利とは呼べない。

 SDGs時代に新たな競争優位を獲得していくためには、自社の“大義”に当たる経営目標から事業領域、事業戦略、組織能力、マネジメントシステムまでの大きく5つの問い(Strategic Choice Cascade)に対する選択のすべてにサステナビリティの概念を埋め込んだうえで、一連の戦略ストーリーとして紡ぐことが求められる。

 この戦略ストーリーの実行こそが、SDGsが問いかけている、内発的な経営のトランスフォーメーションにつながるのだ。

 SDGsがもたらした「経営モデルの変革」の波に、いまこそ立ち向かうときである。