今年の年次総会での日本のプレゼンスは、どうだったのでしょうか。
江田 今年は安倍晋三総理が5年ぶりに参加され、6月に大阪で開かれるG20(主要20カ国・地域首脳会議)のホスト国として何を提唱していくかということを具体的にお話しになったので、とても心強かったです。河野太郎外務大臣や石井啓一国土交通大臣など4人の大臣も参加され、日本企業のトップの方たちも非常に盛り上がっていました。

モニター デロイト
ジャパンプラクティス リーダー
パートナー
デロイトの戦略部門であるモニター デロイトのジャパンリーダーであり、Innovation およびCSV/Sustainabilityの戦略プラクティスに多くの経験を有する。
藤井 新しいグローバル・アーキテクチャーの形成において日本にどんなことが期待されているとお感じになりますか。
江田 グローバリゼーション4.0の4つのドライバーのほかに、日本には喫緊の問題として少子高齢化や地方の過疎化など、世界に先駆けて直面している社会課題があります。
そうした社会課題を解決する構想として「Society 5.0」などがあるわけですが、いかに誰も取り残さないでしっかりとした社会を形成していくか。そういう長期的視点に立って、日本の政府や民間が蓄積してきた知識や経験をグローバルな議論の場で、しっかりと共有してほしい。日本に対しては、そういう期待が強いと思います。
もちろん、日本にだってまだ解決できていない、解決法がわからない課題はたくさんあります。しかし、みんなより先に経験を積んできた人の話には、非常に重みがあります。ですから、解決の方向性が定まっていない議論の中に、日本の人たちがどんどん入り込んで、世界の人たちとさまざまに議論することが、地球規模の課題解決に向けた貢献になると思います。
年次総会は毎年スイスで開催していますが、ヨーロッパの人たちにとっては地元のようなものなので、あまり国を背負って参加しているという意識はありません。一人ひとりが、自分は何ができるだろうかという意識で参加していますから、日本の人たちも同じような目線で意見を言っていただければいいと思います。
藤井 一人称としてどんどん議論に入っていくべきだし、それができるだけの知識や経験を日本人は持っているということですね。
江田 はい。グローバルでの活動経験の厚い経営者も増えてきましたし、もっと個人としての意見を発信していただいてもいいと思うんですね。
藤井 逆に言うと、まだ若干オブラートに包んでいるというところもあると。
江田 日本人のいいところでもありますが、やっぱり控えめなところがありますよね。もっと個性を前面に出していく方が増えていくと、議論がさらに活性化すると思います。
日本から来ているのだから、みんなが同じ視線、同じ問題意識を共有しているという必要性は必ずしもありません。さまざまな社会課題の解決に向けた方法論は、決して一つだけではありませんし、一人の発言がほかの誰かにヒントやインパクトを与えて、より建設的な議論が広がっていく。そういう環境を醸成していきたいと、私たちは思っています。