社会課題への反応を早める
その意識を持つだけで経営のあり方が変わる

藤井 サーキュラー・エコノミーに関わる動きがEU(欧州連合)を中心に活発化していますが、これについて世界経済フォーラムではどのように関わっていくのですか。

江田 日本の産業界は長年、循環型社会の形成に関わり、それに貢献してきました。サーキュラー・エコノミーと言葉を変えた途端に、まったく別物に見えるかもしれませんが、私はそうではないと思っています。

 ですから、まずは日本の人たちにもグローバルな議論に関わっていただいて、いろいろなところで貢献できる環境づくりを私たちがお手伝いしたいと思っています。

 例えば、世界経済フォーラムはサーキュラー・エコノミーを推進するためのグローバルなプラットフォームとして、「PACE」(Platform for Accelerating the Circular Economy)を発足させました。財務省出身でワシントンDCに本部がある世界環境ファシリティCEO兼評議会議長の石井菜穂子さんと、フィリップスのCEOのフランス・バンホーテンさんが共同議長を務めていて、各国の政府機関やいろいろな企業が加盟しています。

 日本では環境省がPACEのハブとなって活動を推進していくことになっているのですが、この活動に参加していただければ、日本から世界へ英語で発信していくことも容易になります。

 昨年10月には、横浜で「世界循環経済フォーラム」が、環境省とフィンランド・イノベーション基金(SITRA)の主催で開かれましたが、世界経済フォーラムとしても世界各国でさまざまなセッションを行っていますので、そうした場を通じて、日本の情報発信と国際的なネットワークづくりを支援していきたいと思っています。

藤井 世界経済フォーラムがサンフランシスコに設立した「第四次産業革命センター」(C4IR)の姉妹拠点を、2018年夏に東京でも発足させましたね。具体的に今後、どんな活動をされるのでしょうか。

江田 C4IRジャパンは経済産業省、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブと共同で設立しました。

 C4IRはAIやIoTなど先端技術を活用した第四次産業革命に関する取り組みを集中的に議論したり、実証事業をしたりするための拠点として、世界経済フォーラムが2017年3月に設立したものです。国境を越えたオープン・イノベーションを推進する拠点として世界経済の成長に貢献すると同時に、テクノロジーの進化のスピードが速すぎて対応する法制度が追いついていなかったり、各国でばらつきがあったりしますので、そうしたガバナンス・ギャップを克服することも目的としています。

 そうした活動をサンフランシスコだけでやっていても、世界全体をカバーできません。ですから、日本と中国、インドにも姉妹拠点をつくることにしたのです。

 C4IRジャパンでは、主にヘルスケアとモビリティを研究分野とし、それからイノベーションを推進するための法制度についても議論します。参加者のニーズを踏まえながら他の分野についても検討していきますし、他の姉妹拠点とも積極的に連携していきます。