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世界中で性別・年齢・国籍を理由にした差別を解消する動きが進んでいる。法に触れるような明らかな差別はなくなりつつあるが、男性には女性よりも多くのチャンスを提供したり、同じミスでも白人より黒人を厳しく叱責したりと、マネジャーによる小さな不平等の積み重ねが、社内の昇級・昇進に大きな影響を与えている現実もある。職場の差別を解消するために、マネジャーは何をすべきか。


 差別による不平等は、あなたの会社にもおそらく存在する。そのことに気づいているかは別にして、ほとんどの企業がこの問題を抱えている。

 米国の職場では、悪しき不平等がいまも解消されていない。特に女性と有色人種は、男性や白人に比べて給料が少なく昇進もしづらいのが現状だ。

 米国の連邦法は半世紀以上前から職場での差別を禁じているが、不平等がすぐに解消されることはなさそうだ。私が最近の研究で指摘したように、現在の法律は、マネジャーなどのリーダーが不平等を迅速に解消するよう促す、インセンティブを与えられていない。

 一般にコンプライアンス(法令遵守)制度で注意が払われるのは、誰を昇進させるか、誰にどれくらいボーナスを支給するかなどの人事上の大きな意思決定だ。それ以外の細かな決定はすべて黙殺されている。しかし、長期的にはそれらの判断が社員のパフォーマンスに影響を及ぼすケースもある。

 たとえば、男性社員と女性社員の営業成績に差がある場合、それは元をただせば、どの社員にどの営業先を担当させるか、誰にどの程度のフィードバックやコーチングを施すか、得意先と会う機会を誰にどのくらい与えるかなど、マネジャーの過去の判断が原因かもしれない。昇進させる人物を選ぶ時点での社員間の経験やスキルの差も、誰に重要な仕事を任せるか、大きな失敗をしたあとで誰に次の機会を与えるかといった、マネジャーの過去の判断が影響している可能性がある。これらは正式な決定というより、マネジャーの個人的な選択と呼ぶべきものだ。

 この問題を解消するためのヒントは、思わぬところにあるのかもしれない。それは、人種バイアスが学校での生徒への処罰にどのように影響するかに関する、社会科学的な研究だ。

 私が在籍しているオレゴン大学の研究者たちは長年の研究を通じて、学校で日常の小さな意思決定が積み重なることで不平等が生まれることを明らかにした。研究チームの表現を借りれば、「危うい意思決定の機会」に光を当てたのである。

 この研究によれば、学校側が白人生徒よりも黒人生徒に処罰を科す傾向がとりわけ甚だしいのは、客観的な規則違反(ケンカなど)ではなく、主観的な規則違反(礼儀を欠いた言動など)が問題にされる場合だ。つまり、ケンカのほうが重大な規則違反かもしれないが、もっと頻繁に発生する軽度の規則違反での処罰の不公正が累積する結果として、人種間に大きな不平等が出現するのだ。

 この点を考えると、教室や職場での不平等を解消するためには、差別が最初に生じる機会を絶つことが重要に思える。具体的には、以下のような対策を試みてはどうだろう。