ALLEN ZHANG OF WECHAT (HBR STAFF/QILAI SHEN/GETTY IMAGES)

新たなSNSが生まれては消えていく厳しい競争環境において、中国IT企業大手テンセントが開発したウィーチャット(WeChat)は一大プラットフォームに成長した。フェイスブックやグーグルを排除する、中国特有のビジネス環境がその成功要因だという見方も根強いが、それだけではない。創設者のアレン・ジャンが、デザイン思考とは大きく異なるイノベーション手法の「グランドデザイン」を実践したことが、同サービスの急成長を牽引したと筆者らは主張する。


 中国では、メッセージアプリのウィーチャット(WeChat。微信)は人々の日常生活を支配している。1日のアクティブユーザー数は10億人を超え、ソーシャルネットワーキングとチャットを行うデフォルト機能となっている。ユーザーが送信するメッセージ数は、1日延べ450億件以上だ。

 モバイル決済でも最大手であり、ウィーチャットペイのユーザーは8億人を超える。そして将来有望な中国人ユーザー層に向け、配車、レストラン、映画の予約、販売アプリ等々を含む総合的サービスを、すべて同じプラットフォーム内で提供している。