顧客の声に耳を傾けることの限界

 ビジネス界で必ずと言っていいほど繰り返されるパターンといえば、業界大手が技術や市場の変化に素早く対応することができずに失敗するというものである。

 グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバーとブリヂストン・ファイアストン・ノースアメリカン・タイヤは、ラジアルタイヤ市場への参入が大幅に遅れた。ゼロックスは、キヤノンが小型コピー機市場を開拓するのを許してしまった。ビュサイラス・エリーは、キャタピラーとジョン・ディアに掘削機市場を奪われてしまった。シアーズ・ローバックはウォルマート・ストアーズに駆逐された。

 とりわけコンピュータ業界では、この失敗パターンが頻繁に見られる。IBMはメインフレーム市場を独占していたにもかかわらず、メインフレームよりも技術的には格段に単純なミニコンピュータ(ミニコン)の出現により、何年もの間、ライバルに水をあけられることになった。