真のイノベーションがなぜ生まれないのか
私たちが記憶している限り、イノベーションはいつの時代もリーダーたちの最優先事項であり、最大の悩みの種でもあった。マッキンゼー・アンド・カンパニーの最近の調査では、世界の企業幹部の84%が、自社の成長戦略にとってイノベーションは非常に重要だと答えている。ただ、圧倒的多数の94%が、自社のイノベーションの成果に不満があるとも言っている。当初描いた壮大な夢の達成にはほど遠いイノベーションが大半だという点には、多くの人々が同意するだろう。
ただ、その数字を見ても、どうも腑に落ちない。企業がいまほど、顧客のことを知っている時代はない。ビッグデータ革命のおかげで、量、種類ともに膨大な個人情報をこれまでになく迅速に収集し、それに基づいて高度な分析を実行できるようになった。多くの企業が組織的で統制の取れたイノベーションプロセスを確立し、高度なスキルを持つ人材を集めてそれを運用している。さらに、こうした企業の大半は、イノベーションのリスクを注意深く計算して、軽減策を講じている。
外部からは、各社とも精密で科学的なプロセスを使いこなしているように見える。しかし、その実、一か八かで苦し紛れにイノベーションを進めている企業がほとんどなのである。なぜ、こんなことになってしまったのだろうか。