インフルエンサーの
ベーシック・インカムを創りたい

 創業から5年目に突入。インフルエンサー市場の拡大に伴い、出版社各社の進出に加え、住友商事などの大手商社や吉本興業などの芸能事務所、グローバル大手企業の日本進出も増えてきている。TAGPICはどのような差別化ポイントを持って競争優位性を維持していくのだろうか。

 一つ目は金融スキームを組み込んだ広告×金融の新たな「ストラクチャード広告」の開発だ。著名人(KOL:Key Opinion Leader)との契約金の代わりに、ストックオプションを発行するモデルで、「従来、タレントやインフルエンサーは、テレビCMに出演したり、インスタグラムに投稿したりした対価として報酬を受け取ってきました。今後はそれ以外にも、クライアントのブランド価値を向上させたことに見合った対価を受け取るような仕組みがあってもいいのではないかと考え、当社の金融ストラクチャーチームが、新株予約権評価・設計のプルータス社と組んで考案しました」と安岡氏。

 広告宣伝に関わる費用を、ストックオプションで手当てすることにより、上場前の企業にとっては、IR(投資家向け広報)において一定の利益水準が求められるなかで、販管費を圧縮することができる。一方の著名人にとっても、通常の芸能活動以外にも、自らがビジネスに絡んだ副次的なストック型の収入を得ることができるなど、双方のニーズを満たす新しい広告契約形態として期待が寄せられている。

 差別化ポイントの二つ目はD2C事業。消費者に対してメーカーが商品を直接販売する仕組みのことで、インフルエンサーを活用して自社ブランドの商品を開発し、プロモーションを行いながら、ECサイトなど自社のチャネルで販売していく。「いろいろなお客様と仕事をさせていただくなかで、この商品にはこういうインフルエンサーが、あるいはこういうプロモーションがマッチするといった知見も蓄積されてきたので、自社ブランドを手掛ける好機と捉えています」(安岡氏)。自社で商品を製造・販売するだけでなく、クライアントのD2C事業を一気通貫で支援するソリューションビジネスも2020年2月より提供している。

 さらにTAGPICでは、「インフルエンサーのベーシック・インカムを創る」をビジョンに掲げており、CSR活動の一環で、インフルエンサー向けの福利厚生制度もつくった。これは、TAGPICが持つインフルエンサーのネットワークにクライアントの商品・サービス情報を一斉配信し、無料で商品・サービスを体験、プロモーションしてもらうというものである。これまでに、アイスクリーム、ブランド品買取、ジュエリー、スタジオ写真撮影といった商品・サービスを提供。今後もそのメニューを拡充し、インフルエンサーの生活基盤を提供する予定だ。